座談会レポート「新コロナウィルスが加速する職場の変革(在宅3週間目の現在位置)〜リモートワークで働き方はどう変わり、マネジャーと社内・社外コーチの役割はどう変わっていくのか」前半

バランスト・グロースでは10数年前よりプロセスワークの世界的第1人者であるスクートボーダー博士の薫陶をうけながら、個人と集団の変容心理学である「プロセスワーク」をビジネス領域に適用することに力を入れてきました。最近では組織開発スクールやプロセスワーク・コーチング(豪州のコーチング機関と提携)といった、社内外の組織開発プロフェッショナルの育成コースも定期的に開講しています。

今回は、上記学びの場を共に作ってきた仲間と上記テーマについて座談会を行いました。非常に興味深い内容でしたので、そのサマリーをレポートします。

登場者をシンプルにするために、誌面上では進行役の松田(私)以外は仮名で表記します。

日系人事 Aさん(典型的日系大企業の人事子会社)

日系グローバル企業人事 Bさん

外資系人事 Cさん

外資系人事 Dさん

コンサルタント Eさん

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松田今回のテーマは、今話題の新コロナ対応の流れの延長で「リモートワークなどで働き方はどう変わり、マネジャーと社内・社外コーチの役割はどう変わっていくのか」です。

ぜひホットなトピックで皆さんと未来の働き方に対するヒト系支援の“今とこれから”を具体的に議論できればと思います。

では皆さん、コングルーエンスモデルを使って一言お願いします。

 

外資系人事Dさん在宅3週間目。zoomやTeamsの使用シーン(プレゼン、小グループ)が飛躍的に上がっている。Kahoot!(オンラインでオリジナル・クイズができる)ともどんどん活用するようになってきている。「Work from anywhere」ですね。

在宅が進まなかった地方でも、一気に在宅が進みました。大変さもあるが、ポジティブな面がたくさんある。一方で、画面見てI日過ごしてしまったりとか疲れることがあるので、気をつけて体を動かしたい。他には、免疫を上げるには楽しいのが大事なので、YouTubeで落語を聞いたりしています。


コンサルタント Eさん
研修もワークショップ・ファシリテーションもほぼ全部キャンセル(汗)。そんな中で1つ明るい話として、保守的な(?)某大手金融機関でオンラインを決断し実施しました。Zoomも初めての人ばかり。でも無事に50名でオンライン研修できました。そのお陰で、事務局と私との関係性が変わった。

また、異文化診断を扱う世界的な専門家コミュニティで、新型コロナウイルスをどう見るかについて対話すると、国民文化の違いが見えて面白い。でも先を考えると収入が不安でしかないです。

日系人事 Aさん会社は大わらわ。古い日本の大企業なので、これまでテレワークを全然進めてなかったのが、一気に進めなきゃで急にリモートワークに前向きに(?)進み出した。来月、新入社員が100名以上入社するのですが、全員にiPadを配布しました。4月20日まで全員在宅でオンライン研修。

でも肝心の研修の中身は慌てて自分たちでオンラインコンテンツを作り始めたところで、凄くつまらない研修内容になりそうで心配です(笑)

日系グローバル人事 Bさん私も在宅勤務3週間目になりました。もともと在宅が多かったので、今回の移行はスムーズ。でも研究開発の部署で実験が多い人は、在宅勤務はしにくい。最近、新卒のオンライン面接をやったのですが、面接の受け手(学生さん)の通信環境が面接官の印象を左右するのが心配(通信環境が悪いと、どうしてもその人の印象も悪くなる)。

また、1日に5、6人の面接すると、通常対面なら10人でも大丈夫なのが、オンライン面談だと凄く疲れます。また、当社は入社式からウェブですが、学生が会社員になって一人ぼっちのままなので、彼らのメンタルが参らないか心配。

個人的には、通勤がなくなっているプラス面が大きい。この空き時間を学びに充てたいですね。松村さん(BGメンバー松村憲)のオンライン瞑想トレーニングにも早速申し込みました(笑)。

外資系人事 Cさん外資系人事Dさんと状況が似ていて、もともと「Work from anywhere, anytime」にしていました。それが新型コロナで、当社のオフィスワーカーは中国を除き全世界でほぼ完全在宅勤務になりました。それまでは在宅勤務は週1、2日でした。

こういう状況になって感じるのは、社員のコミュニケーション能力・ファシリテーション能力が飛躍的に上がらなければならないことです。例えばオンライン会議では、日本人は賛成でも反応しない。ファシリテーター(会議の進行役)が、いろいろな角度からそういう沈黙の参加者の声を引き出す必要がある。

また、オンライン会議で顔を合わせていても、本当の対面会議とは違うので、たまに対面で会ったときの喜びが10倍ぐらいになって、雑談が盛り上がる(笑)。

一方で今の状況のネガティブ面は、年度末に決まっていた海外法人への異動が急にストップして、色々な手続きが水の泡に(涙)。また、工場の近くで感染者が出るとどう対応しようかとか、人事としては毎日決断に迫られている。

もうすぐ新入社員受け入れですが、例年より人事の業務はダントツで増えている。その影響で、在宅でも会議入れまくったり仕事を詰め込みすぎて身体がカチカチに。一種のエコノミー症候群になりそうです。

 

問1 今の状況が加速する「働き方の変化」はどんな影響をマネジャーや担当者に及ぼしていますか?

日系人事 Aさん:すでにテレワークがある環境の人とは違って、当社は初めてのテレワークの状況。4月を迎えて組織体制が新しくなるにあたって、方針の共有やマネジメントの中身をどう作っていくか、それをテレワーク上でどう共有するかという本質的なチャレンジが目の前に迫っているはずなのに、「TV会議ってすごい!」「俺結構テレワークいけるぜ!」で終わっていて、「テレワークにおけるマネジメントの本質」というテーマに気がついていない人が大勢な気がします。

もともと当社には、マネジャーによっては新年度の方針発表を対面環境で相手の反応も見ながら面白おかしく上手にプレゼンする人も結構いるのですが、そういう人に限って資料自体はスカスカのことが多い。「あの資料ではオンラインでは通用しないだろうなー」と感じている。


日系グローバル人事 Bさん
私は研究所の人事を担当していますが、先ほども言いましたが研究員は実験があるので100%在宅にはなりません。業務の中核は相変わらず対面でやりとりされていますが、それ以外の非中核業務については今回の件で在宅勤務が進みました。

ただし、組織文化の変化、ダイバーシティ&インクルージョン、チームワーク、社員のマインドセットなど長期的には重要だが、短期業績にすぐに影響しないものは後回しにしているので、このまま放置したら今後組織の業績に影響が出てきそうだなという懸念を持っています。そういう部分はリモートに向いていないのかなと思う。

もしかして将来的にオンラインでの対話に社員たちが慣れてきたら、そういう部分も扱える時が来るのかもしれませんが、対面で空気感を感じながら進めるのと同じようにできるところまではいかないのではないか。

研究テーマそのものに関しては長期まで方針が決まっているので当面は問題ない。また、新しいアイデアの発想のようなものは対面で集まってやっています。


外資系人事  Cさん
コングルーエンスモデルの真ん中にある「トランスフォーメーションの4つの箱」の部分の変化の加速度が凄いですね。もともと「Work from Anywhere , anytime」というコンセプトで働く社員に働く環境の選択肢があるという方針で、会議の進め方やITシステムを整備してきています。

それでも、この方針にすごく賛同する人たち(若者、女性)にとっては功を奏したものの、カチカチの50歳以上のおじさん(笑)の中には会社に来ることが重要と考えている人もいて、そういう人が上司だとなかなか方針通りには働き方改革が進まなかった。

でも今回は、全員在宅になるという選択肢しかない状況になったので、否応なく環境が変わって、そのお陰で初めてマインドが変わる人がいると感じている。この変化で働き方改革は次のレベルにいく気がしています。

こういう状況になってくると、社員のITリテラシー、ファシリテーションなどのコミュニケーションスキルなど、現在の状況に対応するためのスキルにギャップが出てくる。また、良い側面としては、できないと思っていたことがオンラインで結構できます。

例えば就活イベントも、当社は毎年出ていた就活イベントに出展せずにオンラインにしてみました(その企画は新卒の子)。そうしたら2時間で700人の応募があり、このやり方の方が明らかに費用対効果が高い。

このように、「できないと思っていたものが、やってみたら出来るかも」というマインドセットにつながっていく可能性を感じている。ただし、もっと時間がたって世界経済が大幅に悪化してきたら、コングルーエンス・モデルでいう、「ビジョン、戦略」部分も変わってくるかもしれず、いろいろな恐ろしい変化も起きてくるかもしれないと思うと不安もあります。


日系人事 Aさん
組織にはエージェンティンクな側面(仕事を明確にして具体的にする)とコミュナルな側面(コミュニティとしてのお互いの関係性)があるが、両方に影響が出てくると思います。

日本人のコミュニケーションの特徴はハイコンテクスト(阿吽の呼吸でなんとなく伝わる)なので、オンラインだと難しい。

STICCというフレームワークがあるが、「どういう状況なので」「何に取り組む」「その意図は何で」「どういう懸念・リスクがあり」「どう調整するか」を明確にするコミュニケーション力。コングルーエンスモデルで自分のチームの仕事を自分の言葉で語るコミュニケーション力が必ず必要になってくると思う。


外資系人事 Dさん
いままでのやり方が急にできなくなってしまった、これは大変だ、と思ったら意外にできる一方で、集合研修をむりやりするとコロナ陽性が発生して対応が大変になるとか。

今の状況では、むしろ対面の方が制約が多く、オンラインの方がない。こういう状況にどう対応するかについては、若者にアイデアをもらった方が早いのではないか。

私は会社で “コロナがあるのでこの機会にしかできないことをむしろやってしまおう”と言っています。3.11のことも思い出すのですが、あのとき、世の中のマインドセットが少し変わった。“意外なところから救いの手がやってくる”ことを学んだ経験がある人もいれば、“チームバラバラになって辛かった”という経験をした人もいて、さまざま。

今回も、どういう経験になるか。普段にないことが起きている。こういう時は本当のかたちがあぶり出されますね。また、あのときに災害ユートピアが現れた。

有名コンサルティングファームを辞めてヘルプに来ましたとか、大手商社、行政、若者など次々に素晴らしいリーダーシップが出現し、数ヶ月の間ですが、「日本は変われる!」と思った瞬間があった。残念ながら、一瞬で閉じてしまいましたが。 

今回のコロナもさまざまな変化が起きているのだけど、収束し始めると、社会や組織は元に戻ろうとする。これまでの歴史を振り返っても日本の大がかりな変化は「黒船」「終戦後」など大きなイベントがあったとき。

今回の新型コロナに関しても、これを大きな変革のきっかけとしていきたい。社会の復元力は意外に強く、50代以上(自分も含めて)が特に懐古主義もあるし。

我々組織開発に関わる者の任務は、この瞬間的な変容が起きているモメンタムを閉じさせないところに価値があるのではないでしょうか。そういう意味で、この騒ぎの少しあとの活躍場面の方が大きいのかもしれないですね。


外資系人事 Cさん
3.11の震災のときのことですが、当時入社予定者が10数人しかいないので、通常通りの入社式もできたのですが、あの震災のあとというときにしかできない形式の入社体験をしてもらった。

具体的にはすごく心のケアをしました。そうしたら、通常の年よりも彼らのロイヤリティが向上しました。なので、今私たちは2月からセコムのセキュリティを入れて、毎日朝9時になったら、社員全員に対して、“体調はどうか、どこにいるか、何かコメントはあるか”を聞くメッセージが自動で行くようにしているのですが、内定者についても2週間前からここに入れています。

入社式も、この機会ならではということで、あえてオンラインでやることにしました。そして対面で会えるときに、最大限のお祝いをする計画をしています。

新卒は新しいことに敏感で得意。1ヶ月の新人研修のうち、2週間はプロジェクトを組んで、地域とうまくできるプロジェクトをすることにしました。

今のような世界では、「非日常が日常になるかも知れない」というマインドセットを持つことが重要と思っていますので、こうした非日常の入社式を通じて、そうしたフィロソフィーも新入社員に伝わればうれしいです。


コンサルタント Eさん
最近、経営者のコーチングをしていると、今は短期のリスクマネジメントに一生懸命で、どうしても変化の振れ幅を少なくしようとする傾向があります。

むしろ現場に近い人の方が本質的な変化を生々しくとらえていて、自分で選択して変化している気がします。これが進むと、現場の方が経営者より視点が広くなるという逆転現象も起きるかも知れない。

現場がこの変化に適応していっている経験を経営者に伝えていくことで、トップダウンしかできない社長も、現場の声を尊重するようになってくる可能性がある。それはまるで米国が、テロとの戦いにおいて軍における組織の概念が大きく変化したのと似た状況に思えてきます。

後半に続く