プロセスワークを活用した組織開発とコーチング ~バランスト・グロース・コンサルティング

座談会レポート「新コロナウィルスが加速する職場の変革(在宅3週間目の現在位置)〜リモートワークで働き方はどう変わり、マネジャーと社内・社外コーチの役割はどう変わっていくのか」後半2020年4月2日

バランスト・グロースでは10数年前よりプロセスワークの世界的第1人者であるスクートボーダー博士の薫陶をうけながら、個人と集団の変容心理学である「プロセスワーク」をビジネス領域に適用することに力を入れてきました。最近では組織開発スクールやプロセスワーク・コーチング(豪州のコーチング機関と提携)といった、社内外の組織開発プロフェッショナルの育成コースも定期的に開講しています。

今回は、上記学びの場を共に作ってきた仲間と上記テーマについて座談会を行いました。非常に興味深い内容でしたので、そのサマリーをレポートします。今回は座談会の後半部分をお届けします。
座談会前半はこちら

登場者をシンプルにするために、誌面上では進行役の松田(私)以外は仮名で表記します。

日系人事 Aさん(典型的日系大企業の人事子会社)

日系グローバル企業人事 Bさん

外資系人事 Cさん

外資系人事 Dさん

コンサルタント Eさん

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問2 働き方や関係性の変化は、マネジャーや人事、コーチにどのような変化をもたらすと思いますか?

松田:組織論の世界では、今回の変化に先んじて、ティールとかホラクラシー、アジャイル組織など「公式組織(制度・体制)」部分での変化が起きています。

現場が自律的に短期的な意思決定を行なって自ら動く組織モデルでは、コミュナルな部分が放っておかれて関係性に問題が生じてくることがありますよね。なので社内コーチの役割が増している気がしているのですが、今回の変化は、組織のリーダーや人事、コーチにどのような変化を突きつけると思われますか?


コンサルタント Eさん
:先ほどの金融機関の研修も、一度はキャンセルになったところを、現場の担当者が声を上げて、オンラインで実施されることになりました。そして、そのオンライン提案を上司が引き受け、オブザーブもして、他の研修にも展開していった。これからのリーダーは、現場の担当が動いたのを受けとめて良いフォローを行うような、サーバント・リーダシップがますます重要になると思いますね。


外資系人事 Cさん
:今、有事において現場が頑張っているからこそ、トップの有事のリーダーシップも改めて問われていますね。これまで経営者は事業継続計画(Business Continue Plan : BCP)をどう立てていたか、とか。短期的なことは現場に任せ、そこでの声に耳を傾け、支援して、リーダー自身は先の未来を考え、組織に発信する重要性が増していますね。


松田
:組織には色々な境界や分断があるものだが、その境界の超え方、分断のつなぎ方に変化が起きていますよね。


コンサルタント Eさん
:今の若者はデジタルネイティブですよね。だから、組織の主流派である年配層は、自分たちとは違う非主流派の人たちに助けてもらうという場面が多くなるんです。

よくおじさんは“主体性のない若者!”と決めつけがちだけど、それは果たして本当なのか。若者は電話にはちゃんと出られないけど、チャットの書き込みはちゃんとできる。そうした若者の持つ力を引き出す姿勢があれば、若者がもっと力を発揮しやすくなりますよね。

また、現時点ではまだリアルの代替手段としてのオンラインという位置な気がしますけど、「オンラインでしかできないもの」「リアルでしかできないもの」は何か、という発想を持つことができればその先に行ける気がしています。

オンライン化の中でおじさんの出番は減る一方かと言えば、そうでもないかもしれないんですよね。例えば、私も参加しているボードゲームのコミュニティがあるんです。今回のコロナの影響もあって、学校が休校になり、在宅でエネルギーが余っている子どもたちにネット上でボードゲームを再現できないか、アナログの楽しさにデジタルの手軽さを加えられないか、という実験をしています。こういう場面では50代のおじさんの出番が出てきそうです。

組織内の「社員たちの今後の変化」に関係するかもしれませんが、昨今の状況は非日常発想を多くの人に強いるので、誰でも根源的な発想の転換ができるチャンスですよね。スティーブ・ジョブスのように平穏な状況で非日常の未来を構想できる人は稀ですが、今の状況は、皆が非日常思考をしてジョブスになれるチャンスかも知れません。

 

座談会を終えて

組織の壁を超える「バウンダリー・スパニング」6つの実践』という本に書かれているのですが、昨今のような状況において組織を活性化するには、5つの壁=境界を超えるリーダーシップが必要だそうです。 

  1. 垂直方向の境界:階層、地位、年功、権限、権力を超えたリーダーシップ
  2. 水平方向の境界:部門、ユニット、同僚、専門性を超えたリーダーシップ
  3. ステークホルダーとの境界:組織とその外部パートナーが交わる場所でのリーダーシップ
  4. 人口属性の境界:性別、人種、学歴、思考などの多様性をふまえたリーダーシップ
  5. 地理的な境界:距離、場所、文化、地域、市場を超えたリーダーシップ

今回の新コロナ問題で「5.地理的な境界」に強制的に変化(在宅勤務、鎖国政策)が起き、その影響でこの十数年の趨勢であった「1.垂直方向の境界」の変化が加速されつつある、というのが今回の座談で浮かび上がってきました。

一方で、2、3、4については今回は議論しきれませんでしたが、またこうした対話の機会を定期的に持って、発信していきたいと思います。

コロナ騒動を一過性のもの、困ったものととらえず、本質的変化を考える

有事の時は一体感がでる。今回、グローバル規模の有事なので、どのような大きな愛が生まれてくるのか楽しみな側面もある。でも、そういう災害時のハネムーン期は長続きしないで、表われた感動も忘れられてしまうもの。今回の災害時に表われてきた本質的な変化を未来に繋げていくには、公式組織(制度・体制)、スキルなどかたちあるものに落としておくことも重要だと感じた座談会でした。

<おわり>