プロセスワークを活用した組織開発とコーチング ~バランスト・グロース・コンサルティング

『受講レポート』「世界最高クラスのコンサルタントから学ぶ組織変革リーダーシップ ~ 心理学を活用した組織変革の実践手法」2018年3月25日

2018年3月17日(土) -18日(日)9:30?17:00
『受講レポート』 バランスト・グロース・コンサルティング株式会社 取締役 西田徹

【はじめに】
このレポートはスティーブン博士の講義やワークを客観的に記録する目的ではなく、そこに参加した人にどんな学びや気づきがあったかを、断片的にでも良いのでシェアする目的で書きました。よって、著者である西田の「個人的体験」が多く記載されていることをあらかじめご理解ください。個人的体験や主観的な解釈には★マークをつけました。

【スペーシャスネス】

スペーシャスネスとは、リーダーが「より広々とした視座を持つこと。バルコニーからの眺め」「リラックスしていて大きく見えること」等と配布されたレジュメには記載されています。

スペーシャスネスが足りないとどうなるかの例として、「優秀なのだが、いつもストレスを感じているように見えるCFO。それが理由でCEOに昇進できない(CEOを任せられない)」という人物が紹介されました。

次に「喜びからスペーシャスネスを育む」エクササイズ(ペアワーク)に取り組みました。

詳細を省き、簡単に3つのステップとして、ご紹介します。
①現在の仕事でストレスを感じている状態を思い起こし、いったん脇に置く
②最近で喜びを感じたときのことをパートナーに共有する。喜びの感覚を思い起こす
③その喜びの感覚を持ちながら、ストレスを感じている状況の自分にアドバイスする

★①では、普段は良好な関係なのに、時にイラッとさせられる相手を思い起こしました。そして、②では、笑顔と慈愛があふれるばかりの状況を思い起こしました。その感覚を持ちながらイラッとさせられた相手を思い出すと、「自分が大仏さんになり、相手が仕掛けてくることは、大仏の手の上の孫悟空に過ぎない」ことが実感できました。

★もう一つ感じたことがあります。組織開発のプロジェクトは時にクライアント側のプロジェクトリーダーにとって非常に心理的負担が大きくなるものです。その状況に対して我々が無自覚でいると、彼・彼女の上司である経営トップ層に対する必要以上の気遣いから来るプレッシャーといら立ちをプロジェクトメンバーにぶつける事態も起きやすくなります。スペーシャスネスをプロジェクトチーム内に意図的に育んでもらうことをこれまで以上に意識していきたいと思います。

【リーダーシップの複雑なアイデア】
組織を変革するリーダーには、2つの相反するスタイルの両方を持つことが求められます。例えば、メンバーをサポートする支持的なリーダーシップと、先頭に立ってぐいぐいとひっぱる直接的なスタイルの対比です。思いやりと強さの両方を持つ、ネルソン・マンデラが具体例として紹介されました。

レクチャーの後、エクササイズ(ペアワーク)に取り組みました。

詳細を省き、簡単にご紹介します。
①自分のリーダーシップのスタイルとそのベネフィットいついてパートナーにシェアする
②自分とは異なるスタイルを持つ他者とそのベネフィットについて考える
③二つのスタイルを同時に持った状態を想像する

★組織開発ファシリテーターとしての自分のスタイルを①で振り返ると、冷静で理知的な自分が浮かびました。そして②の自分とは全く異なるスタイルとして「青春ドラマの熱血教師」が浮かびました。③を考えていると、ある特殊な状況で両極のスタイルを実現した時があったこと。そしてその時の自分が「スーパー・ファシリテーター」としてプロジェクトメンバーに非常に感謝されたことを思い出しました。これはたった1回起きた偶然であり、その再現方法はいまだ不明なのですが、両極のスタイルを同時に持つパワフルさが大いに腹落ちしました。

【葛藤回避とフリッピング】
(詳細省略)

【他者からの微細なフィードバック】
(詳細省略)

【ケーススタディ】コダック
スティーブン博士がホワイトボードに描いた2つの図があります。

左側の図は、「普段のもの」から「起ころうとしているもの」への「エッジ」、そして現状にとどまることを居心地悪くさせる「妨害するもの」、変革へ引き込む「魅惑するもの」、エッジに存在する「トロル」。変革に対する「抵抗」です。

右側の図は、組織における「主流派」と「ゴースト」≒非主流派。そしてゴーストが地下に潜って「妨害する」という現象です。

これらのコンセプトを使って、コダックが豊富な経営資源を持ち、世界初のデジタルカメラを1975年に発明していながらも、長期低落傾向から脱することができずに倒産にいたったのはなぜかを数名ずつのグループに分かれて議論しました。また、そこからの学びを自分の組織にあてはめることも検討しました。

【エクササイズ:100歳の自分】
(インナーワーク)素晴らしい人生をおくった100歳の自分。その賢明な自分物のあり方に気づき、100歳の自分になって今の自分にアドバイスしました。

★自分自身の気づきはそんなに大きくなかったのですが、豊かで感動的なメッセージを得た参加者が多かったようです。個人的に話したある方は「自分自身をそんなに責めなくてよいのだ」という大いなる癒しを100歳の自分からもらったと述べておられました。

【質疑応答】
示唆に富んだ質疑応答が沢山交わされました。そのうち1つだけをご紹介します。

50人程度の組織のCEOからこんな相談が提示されました。各地に拠点がちらばっており、そのうち一つの拠点リーダーの女性からこんな「クレーム」が来ています。

「顧客ニーズに合わせて夜8時まで営業をしているのですが、もう少し早く帰って家族を大事にしたい。また、時短で早く帰れる社員もいるのを見ていると、自分だけが損な役回りを押し付けられているような気にもなる。」

スティーブン博士は「ではワークをしよう」と提案しました。役割を交代し、CEOがリーダー女性役を、スティーブンがCEO役を演じて5分程度の会話をしました。役に入ったスティーブンからのメッセージの要旨は以下です。

「あなたの苦しみはよくわかりました。私もなんとかしたいです。どんな解決策があるか一緒に考えましょう。あなたに何かアイデアがあれば教えてください。」

ロールプレイの中では新たなアイデアは出なかったのですが、ワークを終えて感想を求められたCEOのコメントが非常に印象的でした。

「既に半分解決しました」

「半分解決した」という意味を私は以下のように個人的に解釈しました。私見ではあるものの、大きく間違ってはいないと思います。

★「私も8時より前に帰りたい」というコメントの奥深くにあるメッセージは「CEO、私の苦しみを本気で理解してください」「私を単なる手足として使うのではなく、この組織のリーダーチームの一員(仲間)としてみてください」である。そのことにCEOが気づかれたのだと感じました。当然のことながら、その場にその女性リーダーはいませんでしたが、CEOと彼女の関係は今後大きく改善するであろうと感じました。

以上