スティーブン博士の7つの教え

下記は昨年コロナ禍で来日はできなかったものの、オンラインで素晴らしいセミナーをファシリテーションしてくれたスティーブン博士の教えのメモです。スティーブンは個人的に米国で大学院生をしている頃の私のアドバイザーであり、師弟関係から学ぶ部分が大きいプロセスワークの文字通りの師匠となります。弟子でもあった視点から、大企業の組織変革やエグゼクティブコーチングなど世界中でプロセスワークを実践してきた百戦錬磨の長老の教えを言葉にしてみました。

スティーブン博士の教え①

『三匹のヤギのがらがらどん』のお話は普遍的で深いものがある。

飽きるほど聞いている話なのに、学び手の謙虚さを持って聞くと新たな真実に光が当たる。ビジネスや組織における変革事例の多くは失敗すると言われる。 プロセスワークの視点からすれば理由はエッジを適切に扱えていないからだ 。ヤギの話から私たちは大いに学ぶことができる。

スティーブン博士の教え②

変革プロセスにおいては三つの主要なチャレンジがある。

①親しみ 誰しも慣れ親しんだ方法や在り方に戻りたがるものだ。

②ビジョン 明確なビジョンとその浸透プロセスが重要だ。

③抵抗 変化が抵抗に出会うのは自明。抵抗をよく理解してスキルフル(*)に対応せねばならない。

*スティーブンのよく使う「スキルフル」という言葉は示唆に富む。スキルフルの意味することは、抵抗も自然のプロセスであることを知り尊重する、敬意を持つということだ。相手を否定するやり方はスキルフルではない。それどころか抵抗が強まり変革は失敗する。そうではなくて、仮に同意できなくても相手の真意を理解しようとする、その態度はスキルフルに私たちを近づける。

スティーブン博士の教え③

対立に取り組むコーチやファシリテーターは、自分も容易に問題の一部になるリスクがある。最初に必要なのはスペーシャスネス(広大さの瞑想)を手に入れることだ。このレッスンが身につけば、あらゆる問題は大したことではない、と思えるようになる(*)。

*自然の偉大さを前にする時、私たちは自身の小ささを知り受け入れる。その時に私たちは広大さ(スペーシャスネス)に触れている。さらに一歩進んで、広大さを自分の一部としてみる。問題はそれだけで溶解しているかもしれない。

スティーブン博士の教え④

人を批判したり、人の言動を理由に嫌いになることは容易だ。

もし自分にリアクション(反応)があるならば、

それは自分がワークする必要がある、というサインだ。

相手の言動が理不尽な時でさえ、自分にも取り組む仕事がある。

投影という心の機序を理解することは必須だ(*)

*嫌いな相手、嫌悪する相手を前に自分の心にあるリアクション(反応)。どれだけ認めたくなくてもそれは、自分の反応だ。反応してしまうのは、心のどこかにある同質のものを肯定できないから、心は健全さを得るために、あたかも他者がそれをもっているかのように投射する。古くから深層心理学で「投影」として知られている心の機序。ほんの少しでも、自分のワークを進めるならば身近な関係や職場の関係性がきっと変化する。世界はほんの少し過ごしやすい場所になるかもしれない。

スティーブン博士の教え⑤

自分が受け入れがたい心の質や態度を他者に投影する。

さらに一般化して〇〇な人全体に投影する。

誤りに気づくと投影は引き戻される。

気づきは痛み伴うが成長の旅路だ。

善悪も含めてありのままの自分に出会う時、

私たちは自分の人間性(ヒューマニティ)を取り戻す(*)。

*この話はスティーブンの深く素敵な実体験のお話に基づいている。例えば「日本人は〇〇」っていうように集合的な投影を人々はしてしまうものだ。でも、〇〇の一人一人には本当は個別の物語がある。嫌いだったものの一部を担っている人は、もしかしたら自分の大切な人や先祖だったりするかもしれない。

スティーブン博士の教え⑥

葛藤や対立において最初に重要なこと。

それは自分の立場を取り切るということだ。

多くの場合(特に日本人の場合)ここにエッジがある。

ここを超えないと葛藤は繰り返される。

次にすることは相手の立場に立つことだ。

つまり、相手の靴を履き相手の視点から理解することだ(*)。

*プロセスワークが優れた技術であることの秘密の一つは、人間関係の仕組みへの洞察と介入が極めて洗練されているからだ。多くの人は関わりを欲している。だから苛立ったり、怒ったりもする。勇気をもって自分の本音を言い切ってみる。それから勇気をもって相手の立場を取り切ってみる。これはビジネスシーンでのファシリテーションにおいても、葛藤を解消していく魔法のような効果を持つアプローチになる。

スティーブン博士の教え⑦

怒りの背後には深いパワーがある。

強い怒りを感じることや顕すことは誰しもエッジがある。

でも怒らなければその力に目覚めることができない。

理不尽な事象に対する怒りに目覚める。

ここには大きな集合的なエッジがある(*)。

(*)怒ることへの大きなエッジが特に日本の人にはあるかもしれない。怒り自体をよくないものとして抑圧するのは自然のプロセスではない。むしろ気づきを高め、感情に呑まれずに怒りの中に入ると、その背景に深い自分のパワーが眠っていることに気づく。

 

以上。いかがでしたでしょうか?

修行のような、取り組むのが大変なことのように思われる部分もあると思いますが、スティーブンがそれを実践しているからこそ、彼のbeingは素晴らしいのだと思います。また、そのロールモデルとなったミンデル師匠の影響もあることでしょう。彼らに鼓舞されて、私たちも自分から変化を起こしていく主体になっていけるのだろうと思います。

バランスト・グロース・コンサルティング 取締役

認定プロセスワーカー

松村 憲