プロセスワークを活用した組織開発とコーチング ~バランスト・グロース・コンサルティング

2023年 新年のご挨拶2023年1月13日

2023年新年のご挨拶

 

明けましておめでとうございます。謹んで新春の喜びを申し上げます。
年末年始の期間に昨年1年を振り返り、新年をどう過ごすかについて考えを巡らせた方、或いは新年のスタートに向けた充電として、しばし心身を休められた方もいるかと思います。

私は毎年この時期に「ローマ人の物語」(塩野七生著)をはじめ歴史小説を読み(同じ本を毎年読み返します)、大きな流れを感じる時間としています。今回は、なぜかそうした歴史小説系は読まず、珍しくビジネス書を3冊読みました。
1つは「SINIC理論 過去半世紀を言い当て、来たる半世紀を予測するオムロンの未来学」(中間真一著)。オムロン創始者の立石一真さんが当時の知識人たちと構想した未来予測理論」です。マクロ環境分析としてのPEST(Politic, Economy, Society, Technology)分析や未来構想としてのシナリオプランニングなどがどうも馴染まなかった私の脳にもフィットする、とても分かりやすい手法でした。
2冊目は「再興 THE KAISHA 日本のビジネス・リインベンション」(米カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル政策・戦略大学院教授ウリケ・シューデ著)。ある意味、日本現代経済史・経営史を俯瞰する本です。日本の中にどっぷり浸かっているよりも、海外から俯瞰・観察して書かれたこの本は、今の企業経営がどういう文脈、時代性にあるのかを捉える良書でした。どんなに先の見えない時代状況にあっても、「最良の戦略思考は歴史観からもたらされる」は私の持論ですが、この2冊はまさに企業経営を考える上で大いに参考になる書籍でしょう。
そして3冊目は、手前味噌ですが「対立の炎にとどまる〜自他のあらゆる側面と向き合い、未来を共に変えるエルダーシップ」(プロセスワーク創始者ミンデル博士著)。この本は先の「時代性」を捉える2冊とは異なり、変化に直面した時に、社会コミュニティや組織などの集団そして個人がどういう反応をしやすいのか。その反応を破壊的なものではなく、前向きな想像のエネルギーに転換していくために、リーダーはどう集団に関わったら良いのかについて、ミンデル博士の豊富な紛争解決の実践に基づいた「普遍性」ある叡智が記されています。集団が変革に直面している時、集団の中に方向性を生み出し、潜在的な対立を表面化させ、それを建設的に統合して行くのは最も困難で尊いリーダーシップであると、ハーバード大のハイフェッツ教授は言っていますが、ミンデルはそのリーダーシップを「エルダーシップ」」と呼び、この本の中で事例をもとに詳細に解説しています。

私たちバランスト・グロース・コンサルティングは、お客様が直面する変化の荒波こそが、次世代のリーダーを育み、組織文化を革新する絶好の環境となると信じ、昨年も多くの人材・組織開発プロジェクトに取り組んできました。その中から印象的なイベントを「2022年の足跡」としてご紹介したいと思います。

 

――バランスト・グロース・コンサルティング「2022年のあゆみ」――

 

■ 出版のあゆみ:世界の組織開発・リーダーシップ開発の名著の翻訳出版
昨年12月にプロセスワーク創始者ミンデル博士著「対立の炎にとどまる〜自他のあらゆる側面と向き合い、未来を共に変えるエルダーシップ」が英治出版より発売されました。ここの本は、個人と集団の変容心理学である「プロセスワーク」に私が出会った十数年前に旧版の抄訳を読み、大きな感銘を受けた本です。昨今では企業組織内ではダイバーシティ&インクルージョンやエンゲージメントが注目される中、心理学に注目が集まっています。一方、政治社会面では紛争や国際間の密接な結びつきから地政学が脚光を浴びています。ミンデル博士は本の中で「政治学と心理学は、善かれ悪しかれ、いわば結婚したパートナーのようなもの」という表現を使い、国際紛争など社会的テーマ・事例も多数登場しますが、身近な関係性に置き換えながら読んでいくと個人の内面心理から集団間の相互作用について、多くの洞察を得られる、まさに心理学と政治学を結ぶ名著です。ぜひこの機会に多くの方に触れて頂きたいと願っております。

 

 

■ 「人材・組織開発プロジェクト」のあゆみ:印象に残ったTOP4事例
私たちが人材・組織開発プロジェクトを実施する時、組織状況を次の図のように捉え、お客様と共にプロジェクトを設計し、実施していきます。広く会社や事業部全体、または特定のマネジメント階層別にアプローチする①(全体的に黄色信号)や問題あるリーダーや部門に対してアプローチする②、③、④のパターンなど。最近は各社ともにエンゲージメント・サーベイを導入されているので、組織状況の見える化が進んでいるにもかかわらず、「サーベイで組織の課題は指摘されたが、役員〜部長で共有したものの何の効果的なアクションもとっていない、または一時の対話の場は設けたが、そこから組織開発・変革に繋げられていない」などエンゲージメントサーベイ上手に活用できないまま、優秀な若手の離職や組織の低体感を払拭できていないという問題意識を持つ企業が多いようです。昨年の印象に残ったTOP5事例の最初の2つは、このエンゲージメントを切り口にアプローチした2つの事例です。

 

 

【エンゲージメントサーベイと組織開発・リーダーシップ開発プロジェクト】

● 事例A社「組織変革の後半フェーズにミドルに経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定・浸透させるプロジェクトの伴走」

<概要>
400名組織のA社は、数年前から経営者が代わり、外部環境の実態に合わせた組織に転換すべく生産拠点の閉鎖含む経営合理化含む組織変更を行なってきた。一旦は筋肉質の組織体質にするのは理にかなったことではあったが、社内の活気は低下し、エンゲージメント・サーベイの結果にもそれは現れ、上の図で言うと「重傷」と「中軽傷」の中間の状況でした。
通常、こうした状況では、経営陣が現状認識と組織変革イメージを議論するところから入り(弊社の場合は、サーベイ結果やハーバードのケーススタディなどを使用した経営合宿の企画・運営をサポート)、その後に次の打ち手として、製販研のミドルを選抜して部門横断のプロジェクトが立ち上がることが多い。プロジェクトのテーマには「事業戦略の明確化」「新製品開発の促進」「海外の現地スタッフの活性化」が多いのですが、A社はミドルを集めて企業の「ミッション・ビジョン・バリュー」を再策定・浸透する施策を選択しました。パーパス経営が重視される昨今では、この理念系の組織開発プロジェクトも多いのですが、必ずボトルネックになるのが浸透フェーズです。
浸透フェーズで挫折しないために、ミッション・ビジョンも含めて一旦ミドルに策定させ、彼らを理念浸透・実践の体現者、変革の主体者として活躍してもらうことを意図したプロジェクトです。
ポイントはプロジェクトのスポンサーである経営者とのパートナーシップと参加メンバーが主人公・主体者になる仕掛け、そしてその為のクライアント事務局と我々との密な協力関係です。
本プロジェクトも事務局と作戦を練って、DAY0でクライアント内キックオフを会長・社長も巻き込んで実施していただいた後に、我々のDAY1でプロジェクトの目的・ゴールとプロセス(進め方)、バリュー(プロジェクトの行動規範)をメンバーとしっかり握ります。DAY1の目的・ゴールで重要なのは、経営理念を策定することが目的ではなく、これから作る経営理念があることで、組織の何がどう変わるのか、その目的意識を明確にして共有すること。そうしないと、理念を作って終わりになってしまいます。
そのDAY1を経ていよいよプロジェクトは本格的に進んでいきます。

 
<成果>
事務局及びメンバーたちの様々な才能が開花し、想像以上の活気とアウトプットが出来上がってきたことと、生き生きと活動するメンバーが途中成果を組織内にオープンにしながら進めたおかげで、彼らのフォロワーも出現してきた。来年度はいよいよ浸透フェーズに突入しますが、メンバーたちは“ここからが本当の勝負だ”と、決意を新たにしているのがとても頼もしく、引き続き伴走サポートをしていきたいと思います。

(注)今回は「ミドルに経営理念を策定させる」打ち手となりましたが、それ以外のミドルに組織分析と事業経営目線で重要な打ち手を考案・実行させるCFTを進める事例についてご関心のある方々は昨年の「2022年新年のご挨拶」を参照ください
https://www.balancedgrowth.co.jp/bgc/2022greeting.php

 

● 事例B社「組織開発(OD)コーチ派遣」
組織内の特定の管理者や部署に効果的に働きかける人・組織のプロとして事業部経営者の組織変革のパートナーとしての戦略人事、HRBPとして組織内の組織開発コンサルタント力を向上したいというご相談が増えています。このご要望に対するアプローチには
•    人事部の組織開発力を上げる:
  ▶︎ 人事部やHRBPのOD力向上トレーニングや環境づくり
  ▶︎ 人事部に外部ODコーチを派遣
•    社内ODコンサルタントを各組織内に作る
  ▶︎ 課長代理層などに対してファシリテータートレーニングを実施し、コミュニケーションの仲介役を担わせる
といったアプローチがありますが、3つ目の事例は某企業人事部へのODコーチ派遣です。

<概要>
当企業では全社エンゲージメント・サーベイではミドル〜若手のスコアが非常に低く、離職者も多く、組織開発の需要が高いと考え、数年前に人事部内にOD専門部隊ができました。しかし、専門部隊のメンバーたちは色々な勉強に通ってはみたものの、実践的なスキルはまだ低く、事業部からも人材・組織開発のプロとして頼りにされる関係性にもなっていない状況でした。そこで、私たちのメンバーをODコーチとして週に1日派遣し、専門部隊へのメンタリング、コーチングを行ったり、事業部経営者をヒアリングしながらODプロジェクト(個人コーチングやチームコーチングなど)を組成し、デリバリーするまでを見本を見せながらOJTしつつ部員たちを「社内ODコーチ」に育成していくサービスを実施。

 

<成果>
ソリューション営業の見本を見せつつ、すでに多くの事業部の経営者から信頼を得て、元々やりたかった「クライアントの個別状況に応じたOD支援企画と提案サポート(営業同行あり)、組織開発ソリューション提供」が着々と進んでいます。

 

【360リーダーシップサーベイLCP(Leadership Circle Profile)を活用したリーダーシップ開発・チーム開発】
米リーダーシップサークル社の本ツールは数年前にマッキンゼーとフォーブスが“世界最高の360サーベイ”だと称した優れたツールです。 
この数年、このツールを活用したリーダーシップ開発プロジェクトが増えていますが、昨年最も印象的だったのは、ある部門で上司(部長5名)と部下(課長10名)で、このツールを活用したリーダーシップ開発を行うことで、リーダーシップ開発と育成的文化の情勢を同時に狙った試みです。

 

● 事例C社:研究所のマネジメント・サクセッサー(後継者)育成環境づくり
<概要>
C社の研究所は変革局面にあり、次の研究所マネジメント候補が育たないとい課題を抱えていました。最初は研究員目線から抜けられず、研究所の変革に適応、リードしようとしない課長を対象としたリーダーシップ開発の相談でしたが、そもそも課長以下を育てられない部長たちこそコーチングを受け、効果を体感し、かつコーチング技術を身につけて、本プロジェクト終了後も継続的に部下育成に取り組んでほしいというご要望を受け、プロジェクトを設計・実施しました。

 

<成果>
•    部長たちが部下が育たない環境要因について、初めて対話し、認識を共有することで、部下が育つ「組織変革の土台・器(コンテナー)」を共同して作っていこうとチーム意識が芽生えた。
•    部長個々には、それまでの自分の部下への関わり方を見直し、より効果的に関わるために自分のリーダーシップを見つめ直した上で、部下へのコーチングを行えるようになった。
•    部下側も自分の内面に向き合い、一皮剥けたリーダーシップを発揮し始めたメンバーが複数いた一方、自分と組織が共創する未来を描けずに退職したメンバーも1名でた(スポンサーは中途半端、惰性で組織で管理職をしているより、退職を選択したことを歓迎した。退職した本人も、改めて自分の歴史を振り返り、ミッションを再定義した上で納得して新たなキャリアを選択した)

 

【マネジメント力強化研修】
トップダウンでの変革の動きに呼応し、ミドルの変革共感力とマネジメント力がボトルネックになるから、またはトップダウンの変革の動きが起こらない状況ながら、来たるべき変革に備えてミドルのマネジメント能力を強化しないと、今の変化の時代に人材育成と成果創造の両立を実現できず、組織が弱ってしまうから、など様々な理由があるようですが、5年前に作ったこのパッケージプログラムが昨年再注目され、多くのご要望を頂きました。

 

● 事例D社:部長むけマネジメント強化研修
<概要>
D社ではこれまでも人事制度を時代にあったものに変更したり、MBA的なスキルインプット研修を実施してきてはいましたが、マネジャーが自分ごととしてマネジメントスキルを消化・活用するには至らないまま、組織の高齢化と若い世代の離職が高まる中で、ミドルのマネジメント力強化をちゃんと行わないと、組織は緩やかに崩壊するし、1on1などの新しい仕組みを入れたところで現場の状況は何も好転しないという危機意識がありました。
我々の「マネジメント力強化」プログラムは、マネジャーが「組織のいま置かれている状況を理解し、その中でミッション(タスク)を遂行するために、チームと個人の力を引き出す」ためのマインドセットとスキルセットを身につけるものです。一方的な経営知識インプットではなく、職場を分析するための事前課題を与えた上で、その診断結果をもとに、マネジャーが抱える実際の重要かつ未解決な実課題を共有・相互コンサルテーションしながら、「グループで課題を検討し解決策を考える会議手法(質問会議)」「コーチング」など部下育成にも使えるコミュニケーション・スキルを習得することで、研修が終わって職場に帰ってからも実際の業務やメンバーに対して使える内容となっています。また、ご自身についての強み・課題も棚卸しして、再認識しながら、リーダーとしてのビジョンを構想する「セルフリーダーシップ」パートも含まれます。

 

DAY3以降の詳細は下図。
 

<成果>
受講者の研修後感想を少し拾ってみます。
「部下への教育や指導において、コーチングの手法が有効であると考えました。試行錯誤しながら取り入れたいと思います。私は経理部長として決算業務の実務総括を行つていますが、部下への教育・指導はOJT中心です。教えるのは最小限に留め、部下自身の努力を重視してきました。従来はこの 手法により、職業人としての主台づくりができていましたが、近年は限界を感じています。丁寧に教えるなど手法を変えながら試行錯誤してきましたが、なかなか業務習得が進まず悩んでいました。コーチングは相手に質問を繰り返し、気づきを促します。その成果を演習を通じて実感しましたので、部下育成においても取り入れたいと思います。また、他の職場の同じ職位の方々とのディスカッションは大いに参考になりました。技術系の方でも、_大学院の専攻と全く関係のない分野でキャリアを築かれた方もいて、そうした方ほど物事をゼロベースで柔軟に考えられます。私は過去の延長線上で施工する癖がついており、大いに反省した次第です」
「今回の研修を受けて、職位にふさわしいリーダーシップとはどのようなものであるのかについて深く学ぶことができ、非常に有意義でした。」
「質問会議は問題の掘り下げと本質の確認に非常に有効であると感じた。質問を受けるうちに、自分でもよく把握できていなかった問題の本質を捉えることができたので、今後自分のチームでも取り入れたいと思う。リーダーシップアセスメントは無料版の自己診断ではあったが、過去の自分史を棚卸しながら、自分のリーダーシップ開発における課題が明確になっり、その後のリーダーとしてのビジョニングで今後の自分が目指すリーダー像がクリアになった」

 

■ スクール部門「組織開発コーチ協会」でのあゆみ
2021年に、ビジネスのみならず公共分野においても求められる、個人と集団の両方の変容をサポートできる「組織開発コーチ」を持続的に排出していくことをミッションに、弊社でこれまで培ったコーチングや組織開発ノウハウを世の中のマネジャー、コンサルタントのスキル向上のための公開講座を提供する「一般社団法人 組織開発コーチ協会」設立いたしました。
https://www.odcoach.org

 

設立2年目となる昨年10月にはプロセスワーク・コーチング創始者で看板講師のロー・サンドバーグ女史が来日し、特別イベントを実施する他、プロセスワーク・コーチング講座も3期生を輩出することができました。本講座の特徴はエグゼクティブの本質的な変容に繋げるコーチングですので、受講者も企業の事業経営者や人事部・課長、元アクセンチュアや元リクルートのコンサルタントなど、高いビジネススキルをお持ちのベテランの方も多いですし、ベンチャー企業で人・組織を担当する若い人事担当の方もいらっしゃいます。
協会で提供する公開講座を社内利用するクライアントも増えてきました。

•    1on1コーチ講座は、卒業生の某組織幹部が、自社の風土改革にとても良いので、全く同じプログラムを管理職33名全員で社内講座として一緒に受講したいというご相談を受け、実施できました。
•    長年お付き合いしている日系メーカーの方は、「組織開発コンサルタント養成講座」に事業ユニット毎に複数の幹部社員を送り込み、公開講座を通じて組織分析スキルと変革マインドを育んだ上で、講座終了後に彼らが連携して自らの組織変革に乗り出すような流れを設計されていて、とても有効な公開講座活用方法とクライアントに教えていただいたと思います。

 

以上、長文となりましたが、バランスト・グロース・コンサアルティングの2022年のあゆみをご紹介させて頂きました。
2023年も日本のリーダーシップ開発、組織開発の実践的なノウハウの進化に一層貢献してまいりたいと思います。上記事例に関して公開セミナーや勉強会を通じて、各企業で組織開発に奮闘している実践家の方々と生きた情報・ノウハウを交換するセミナーや勉強会を開催していく予定ですので、ご期待ください。
 

2023年1月 バランスト・グロース・コンサルティング 松田 栄一