【組織開発コラム】
第1章 組織変革課題の元型
1.部門間葛藤の元型〜市場の環境変化に伴う製販研の葛藤(前編)

部門間葛藤には典型的なパターンがある

製造部門が営業部にあれこれ不満を持っている、その逆も然り、といった状況、社内外で心当たりはありませんか?

実は部門間(例えば製造-販売-開発)の葛藤には典型的なパターンがあるとともに、組織変革にはこういった葛藤や困難な抵抗がつきものです。

今回のコラムでは、その典型的なパターンと実際の事例をご紹介します。
典型的な部門間葛藤のパターンですが、例えばこんな感じです。

営業が強すぎると

プロジェクトが営業現場の号令で無理やりに進められ、十分な開発と検証を経ずに市場化を急ぎすぎやすい。開発は作りたくないものを作らされているので不満が出やすい。

開発が強すぎると

プロジェクトが製造現場の技術志向に偏って進められ、製品化に至るまでに市場理解が不足したまま進む。結果、営業から「こんな高いもの売れない。もっと顧客の好みを踏まえてくれ」とそっぽをむかれ、開発は「何で営業はもっと真剣に売らないのだ」と不満を募らせる。

葛藤の元型が現れ、複雑化する

こういった葛藤に、親会社—子会社の力学や、市場ライフサイクルの変化による部門間リーダーシップのシフト(得てして「製造・開発」→「営業・マーケティング部門」)が重なると、ほぼどの製造業にも存在する、組織の効果性を削ぎやすい部門間葛藤の元型が現れます。

そこにリーダーの個人的なリーダーシップスタイルが要素として加わると、状況はさらに複雑になります。

今回ご紹介するグローバル企業C社も同様の課題を抱えていました。

 

【事例】グローバル企業C社の新規事業における部門間葛藤


会社全体の概要〜大口顧客相手&開発・製造部門が強い〜

産業用高機能材料を生産するグローバル企業C社は、同業他社より多くの研究開発投資を行い、ユニークな製品を生み出し続けることで、年平均10%の売上高成長率を達成してきた。

基本的に2〜3社の大口顧客のみを相手にするため営業部門は小規模で、2〜3名の営業担当が有力取引先を担当。事業部が必要とする市場情報は営業から全て手に入るため、マーケティング努力は希薄。

会社は研究開発本部を極めて重視しており、CEOに直結していた。研究開発に次いで製造部門に力が入れられており、同社のトップマネジメントには製造部門の幹部から昇進したものも多い。

A事業部の概要〜リーダーシップ&市場環境の変化に直面〜

同社の半導体向け新規事業としてA事業部が10年前にスタートした。この事業部を牽引してきたのは、事業部長の加藤氏(以下、人名は仮名)のリーダーシップ。

未来を見通す力があり、製販研全てに通じている同氏の元で順調に事業拡大してきたが、創業社長タイプにありがちな豪腕・高圧型スタイルで、社内では誰も彼に反論できない状態になっていた。部門間葛藤も彼のトップダウンの力で抑えられていた。

しかし、彼のリーダーシップスタイルの弊害(パワハラ、メンタル不調者の発生、事業の持続性)を憂慮した本社は、彼を他事業部へ異動させ、新しい民主的なリーダーを迎えることになった。

その頃から、市場の環境変化も激しくなり、価格低下圧力と高い品質レベル要求が強まってきた。
新しい市場で勝つためには、顧客ニーズの変化に機敏に対応して新製品を出し、比較的高い価格の維持と事業成長を促進する必要があったが、C社はこの変化に上手く対応できず、新製品も出なくなり業績が悪化していった。

新事業部長の悩み

この状況に苦慮していた新事業部長の鈴木氏は、社内の人事部内に新しくできた組織開発チームのリーダーを呼んで相談した。

  • 景気は全般的に良くないし、その影響は業界全般に及んでいるため、当事業部も売上が落ちている。しかし、我々自身の問題も大きい。
  • 短期的な業績悪化を食い止めるために、人件費含むコストカットも手をつけたが、組織力そのものに問題があるようだ。従業員のモチベーションは低いし、部門間の軋轢が大きく、新製品開発力も低下している。
  • 景気が良くなれば解決するという人もいるが、何か根深い問題があるのかも知れない。一度、状況を診断し、どのような対策を立てるべきか助言してくれないか

 

社内インタビューで浮き彫りになった部門間葛藤

社内組織開発チームは、社内の複数のステークホルダーにインタビューを行いながら状況を俯瞰していった。

すると部門間の葛藤が浮き彫りになってきた。それを図にしたのが下図である。

 

組織開発チームの出した診断結果

1. 市場への対応・差別化技術の必要性について

市場に対応するには、競争価格でしかもサービスを良くして製品を拡販することを必要としているが、特別な差別化技術の必要性は他事業部よりも低い。

2. A事業部を取り巻く環境と運営方法

A事業部も他の多くの事業部と同様、伝統的なC社のやり方で運営されており、本社からも他事業部と同じ指標で管理されている。
しかし、他事業部よりもはるかに不確実な環境で運営されているので、経営と組織の運営法は他事業部とは本来異なるべきである。

3. A事業部内の調整部門の必要性

A事業部は高度な機能組織分化によって、調整部門の必要性を強く求められてきたが、事業部内の調整の仕組みが弱まっていた。(かつては加藤氏のリーダーシップで属人的に調整されていた)。
2日にわたって行われる製品開発会議は調整の仕組みの一つであるが、機能していない。

4. 部門間の業績指標の違いによる軋轢

マーケティング部門は利益で評価されないため、新製品の導入にあたって、原価と売値のトレードオフ関係に対する感覚が鈍くなり、販売指向性が強化される傾向。
一方、製造部門はグロスマージン(売上総利益)に責任があるので、マーケティング部門とのやりとりでは必ず最後の一撃を加え、両者の関係は更に悪化する。

5. 加藤氏のリーダーシップの組織文化への影響

加藤氏のリーダーシップの影響で、表面的な妥協か自分の意見の一方的な押しつけで問題解決しがちな組織文化となっており、徹底的で建設的な話し合いはほとんど行われていない。

6. 事業部の目標・戦略・経営哲学の共通理解がない

社員は部長クラスですら、事業部の目標、戦略、経営哲学について共通の理解を持っていない。そのため、議論も噛み合わない。

 

このような部門間葛藤にはどういうアプローチをすればいいのか?

もしあなたなら、このような症状の組織に対して、どのようなアプローチをするでしょうか?

C社が実際にとったアプローチは、次号にてご紹介いたします。

 

バランスト・グロース・コンサルティング株式会社
代表取締役 松田 栄一