実録シリーズ② 製造部長と人事部長が悩んだ現場症状/第1回:間違った見立て、間違った打ち手

実録シリーズ② 製造部長と人事部長が悩んだ現場症状
第1回:間違った見立て、間違った打ち手

売上高1兆円以上のグローバル企業A社、一般的には「エクセレント・カンパニー」と言われる企業の製造現場で実際に起こっていた「非常に生々しい」問題症状を見立て、打ち手を施す変革プロジェクトをお手伝いする機会を頂きました。本コラムでは3回にわたり、その事例を紹介いたします。(執筆:山碕 学)
*尚、機密保持の関係上、匿名性を担保しながら、可能な限り実態と実際が伝わる内容となるよう工夫しています。

 

人・組織の課題へのアプローチの基本は「診:診断する」「証:症状を見立てる」「療:治療する」という3つのステップですが、この「療」の部分に『成功循環創造を目的としたチーム・コーチング』を導入することが効果的な場合も多いと思います。

今回は第1回として、A社の製造現場を「診:診断」し、「証:症状を見立てた」内容をご紹介します。

 

プロジェクトの発端

1年に一度の従業員満足度調査で、佐藤人事部長(以下、登場人物の名前はすべて仮名です)は製造部のある「課」の結果が著しく悪いことを見て、担当する鈴木製造部長に確認しました。
6つの「課」を統括する鈴木部長は、前期のKPI未達が気にかかってはいたものの、課長からは大きな問題報告を受けていません。
佐藤部長からのアプローチがあったことから、その「課」の課長・主任にヒアリングを行いました。
鈴木部長と佐藤部長はその結果を踏まえ、下記のような問題症状と見立てました。

・課長、主任は「KPI達成のための現場体制整備」を苦慮しながら実行している。
・チーム内の人間関係が悪く、KPI達成度(業務品質)が落ち、更には離職者が増加している。
・離職者増は、一時的な少数対応、経験値の低い新任者による業務対応を迫られ、業務品質が更に不安定・低品質となっている。それをカバーするための長時間労働も発生している。
・課長、主任は「KPI達成のための現場体制整備」が更に大変な状態となり、多忙状態。
・一部のベテラン社員が自己流の押し付けと部下への高圧的な態度で人間関係問題を起こしていることが原因のようだ。
・課長、主任には、このベテラン社員への効果的な対応方法を持てていない。

早い業務品質の復調が求められる中、即効性のある打ち手が見えない鈴木部長が佐藤人事部長に相談し、解決の方向性を出してみたが、社内のリソースだけでは難しいことを自覚し、我々に相談、依頼がありました。


鈴木部長、佐藤部長からの依頼された内容のポイントは、
・現場チームの関係の質の改善
・個(課長)への対策
でした。

 

「診」:起こっている症状を診断する

まず、我々が行ったことは「課」のメンバーにインタビューし、実態を把握することでした。
(下記の12名への一人1時間ずつの個別インタビュー)
・加藤課長、田中主任
・山本チームリーダー(TL)=現場のリーダー
・社員:6名
・契約社員:3名
・派遣社員:3名
この中に問題社員と言われていたベテラン社員も含まれていました。

 

「証」:診断結果を見立てる

インタビューを通して見えてきた構造は、
加藤課長と田中主任の問題意識と、現場の問題意識が全く異なり、すれ違っていたことです。
具体的には、
・課長、主任が、Howを考えない。Whatだけ押し付ける。
・その結果、TLと現場に仕事がたまる構造で、TLがパンク。ベテラン社員が仕方なくマネージャの仕事をしているが、権限もなく、結果的に部分最適にしかなっていない。
・スキルある人が抜ける、経験の浅い人を誰もケアしない、問題が発生する、社員が自分の役割以外の仕事が増える、というサイクルの中、現場のプレッシャーとストレスが膨張し続け、4毒素=批判、防御、侮辱、逃避が垂れ流されているのに、誰も対処しない。

というように、組織が崩壊直前のような状態でした。

●インタビューでの具体的な声は下記の通りです。

【加藤課長と田中主任の問題意識】
・部長への報告やマネージャ会議出席など仕事が多いのに、離職者増で業務体制の整備・シフト組など、我々が大変。
・離職者が多い原因は、問題人物が自分流の仕事の進め方に固執して、協力しない人には高圧的なかかわりをすること。
・その人物への対応をしたいが、私たちには打ち手がなく困っている。

【現場をまとめる山本チームリーダーはリーダーになって間もない人】
・問題人物は、元チームリーダーで経験ある契約OB社員。経験の差があるため、対応できない。
・課長、主任に相談しても、二人から適切なアドバイスがもらえないし、どうすればいいかわからない・・・

【現場の声】
・製造現場では常に小さな問題が起こるが、誰が解決するのかわからない。
・これまでも声を上げてきたが、いつまでたっても同じ問題が発生する。自分たちで何とかするしかない。
・スキル面で大事な機能を果たしていた契約社員が、「最長5年。契約延長不可」の制度で抜け、現場が困っている。
・マネージャたちが全く機能していない。(ほぼすべての人の声)
・課長に相談しても「現場のことは現場の人が考えて、工夫すればいい」と言われ、「この人に言っても仕方ない」という諦めがある。
・主任に相談してもその場しのぎの手しか打たない。何も手を打ってもらえないことも多い。
・マネージャたちは私たちのいるフロアと違うフロアにいることのあり、何をしているかわからない。
・マネージャが何もしないし、人も足りないので、経験のある私が何とかするしかないんです!(問題社員と言われていた人の声)

社員の匿名性を担保しながら、社員の声と見えてきた構造を部長、課長、主任、TLにフィードバックしたところ、
部長、課長、主任は、最初ポカンと口を開けた状態となるほど予想外の情報でした。
TLは「私の大変さをやっと明らかにしてもらえた」と泣き出してしまうほどでした。

もしあなたなら、このような症状の組織に対して、どのような「療」でアプローチをするでしょうか?
ポイントとなったことは、時間軸とチームの実力を見立てることでした。

鈴木部長・佐藤部長と我々が実際にとった「療」アプローチは、次回ご紹介いたします。

 

第2回:成果につながらないチームビルディングは行わない