#組織開発

リーダーのための戦略的組織開発Vol.2〜組織変革仕掛け人に必要な知識と視点(後編)〜

  • 対話
  • 組織開発コーチング
  • リーダーシップ

組織変革仕掛け人に必要な知識と視点についてのコラムの後編。プロセスワークの理論である「主流派・非主流派」の対話のモデルについて概説する。

INDEX

2.3 主流派と非主流派が対話できる場づくりの3パターン

前回触れたように、組織変革には積極推進派の主流派と消極派(非主流派:抵抗勢力)という構図ができやすいものです。組織力学とはそういうものだと理解した上で、主流派と非主流派が関係性の4つのフェーズをうまく進み、変革の葛藤を前向きなエネルギーに変換していくためには、対話の場を上手に作っていく必要があります。

主流派と非主流派の対話の基本ステップ基本手順は下図にある①〜⑤のとおりですが、実際私達がよく使うのは3つのアプローチ・パターンがあります。そして、普通は診断する前の段階で大まかなアプローチ・パターンは事務局と協議し決めておきます。

パターン1:診断結果を組織のトップにだけフィードバックし今後のアプローチを考える

組織変革で最も圧がかかるのは主流派の長であるトップです。普段は押さえつけられている非主流派の声(怒りを伴っていることが多い)が表面化したとき、主流派は多少なりともショックを受け、傷つくことがあります。そのため、診断結果をもとにトップと一緒に組織にある声を聞くロールプレイを丁寧に行うことで、トップ自身のものの見方・仮説が再定義され、新たな視点で変革の介入計画を立てることができます。

パターン2:ミドルのリーダーシップ開発という名目で部長層、又は課長層に変革の推進プランの立案実行の主体者となってもらい、トップはそれを支援する

ある程度の規模の組織になると、上意下達の文化が出来上がっているので、部長といえども主流派の長である経営トップに物申すのは心理的に抵抗が大きいものです。しかし、実はミドル層は組織の気になる症状、変革の進め方について、自分なりのアイデアを持っているものです。それをトップとぶつけ合えるぐらいにしっかりしたものにしてあげると、トップと対話できるようになります。その過程でトップの視点にも立てるようになり、従業員マインドから経営マインドへのシフトも起こってきます。

パターン3:主流派、非主流派が一同に介し対話する

20名未満の職場であり激しい対立がない場合は、オフサイトミーティングでチームビルディングをして、皆で地勢図を見ながら対話をしていくことも有効です。組織間も絡む大きな問題であれば、部長層で部門横断オフサイトを実施し、その結果を各部門トップ同士のオフサイトで扱い、最後に各部門トップと部長層で対話するというステップを踏むこともよくあるパターンです。

2.4何についてズレているのか?抵抗勢力?の行動の背景を理解する

どのパターンで行くにしても、診断して作成した組織の地勢図を分析する

人の行動は「環境と人の現状と可能性をどう見ているか?」というものの見方に大きく影響されます。インタビューで作った組織地勢図をもとに3つの論点について対話しながらズレを俯瞰していきます。

ここまで来ると部門間、上下間のズレについて皆で全体像共有でき、そうすると、自ずとバラバラだった組織のベクトルは揃っていきます。

組織の変革の基本条件(マーガレット・ウィートリー博士)

上記の取り組みを通じて、組織変革理論で有名な米国マーガレット・ウィートリー博士の変革の基本条件が整えられていくことになるのです。

・システムに新しい情報が伝達される必要がある(情報を与えるほど同じ方向を向く)
・変革に対する共通の目的意識がある(個人にとって良いことだと感じられる)
・変革がどのように起こるのかについて、全員が自分の考えを述べる機会がある
・全員が、自分の意見がどのように使われ、どのように最終的な決断がなされたかを理解している

変革の発射台が揃うと、その後はトップ又は一部の部長層への個別コーチングであったり、複数メンバーへのチームコーチングであったり、インタビュー力強化などのスキルアップだったりの「療」に移っていきますが、様々なものがあり優劣はつけがたいので、今回は割愛します。

3.変革が一過性のイベントにならないために

組織変革は大変ですが、組織能力が目覚めるチャンスでもあります。一過性に終わることなく、組織の変化適応力を向上していくために、次のポイントを変革プロセスの中で学習することが重要と思います。

・見たくない現実(組織地勢図)を共有しアップデートする
・心理的安全性を担保しながら、反対するものと向き合い統合するための変革の共通言語(組織心理の定理、コミュニケーション・スキル)を持つ

こうした変革へのスタンスを「学習する組織」で有名なセンゲ博士のいう3つのリーダー層(役員リーダー、企画部・人事部などのネットワークリーダー、現場リーダー)で共有し、それぞれの立場から変化への兆しを感じたら、それが組織の中で適切に処理されて行動に移されることが繰り返されていくと、変化に強い生命体、生態系に進化していくと思います。

塩野七海さんのローマ人の物語に次のようなフレーズがあります。

「知力ではギリシア人に劣り、体力ではケルトやゲルマン人に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るローマ人だけが、なぜ巨大な世界帝国を繁栄させることができたのか? 」

皆さんの組織が変化への適応力を高め、素晴らしい繁栄が出現するために重要なことは何か。

簡単には答えられない人と組織の永遠のテーマですが、私達がクライアントと共に探求してきた実践の中から、変革に直面している心ある経営リーダーの皆さんに役立ちそうだと思えることを次号以降のコラムでもご紹介していきたいと思います。

この記事を書いた人

代表取締役

松田栄一(Eiichi Matsuda)

東京大学経済学部卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)に入社。NTTグループのシンクタンクである情報通信総合研究所に出向し、主に日米電気通信事業者の資本政策や管理会計に関する調査研究・コンサルティングに携わる。その後、NTTにおいて海外進出時のブランド戦略、NTTコミュニケーションズ設立時の広告戦略を手がけた後、MBA教教育を手がけるグロービスにて企業内研修部門マーケティング統括リーダーを努める他、戦略、マーケティング等の講師を務める。現在はバランスト・グロース代表として組織開発コンサルティング、エグゼクティブコーチングを行う。

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