#組織開発 2015/02/13

組織開発とプロセスワーク(中編)〜企業事例から学ぶ、変化の見立ての実践〜

  • 実践事例
  • 組織診断
  • 組織開発コーチング
  • 部門間葛藤

前回ご紹介したプロセスワークの重要概念である「3つの現実レベル」と「1次プロセス2次プロセス、エッジ」について今回も企業事例を通じて考えていきたい。

INDEX

事例:国内メーカーにおける商品企画と開発の葛藤

国内大手メーカーの子会社X社は、本体から分社独立し10年が過ぎようとしていた。大企業の系列会社とはいえ、子会社としてスタートした直後はベンチャー気質にあふれる風土。研究、開発、商品企画、マーケティング&営業が一体となって画期的な商品を顧客に送り出す好循環があり、順調に成長してきた。 当時中堅だったキーマン達は社長、副社長、事業部長からなる経営チームとして会社を引っ張っている。

しかし一方で気になるのは、社内でささやかれている「大企業病」「内向きでネガティブな社風」「ベンチャースピリットの喪失」などなど。1000人未満の規模と言っても、そういう組織文化の問題に社員は敏感になってきている。当然、上層部にも危機感があり、「このままでは創業時の良い企業風土とリーダーシップのDNAが消えてしまう」という焦りにも似た危機感から、中堅リーダーを集めてのリーダーシップ研修を行なうこととなった。

受講者の1人であるMさんは、入社以来研究開発を担当してきた。この会社では、商品企画と開発は社内の上流工程と下流工程にあたる。つまり、商品企画と開発がチームとして上手く協業できるかどうかで、商品の品質が決まってくる。近年ここの協業が中々うまく行かず、品質問題に発展するケースもままみられるという状況にあった。

このシステムの1次プロセスを「大企業病」「縦割り意識」などとビッグワードでくくるのは簡単だが、そのままでは問題の本質は見えて来ない。 そこでシステムの1次プロセスを分析するため、チーム(グループ)の協業スタイルが建設的かどうかを診断する米HS社の「グループスタイル診断」を用い、Mさんにチームを分析してもらうことにした。

米HS社のグループスタイル診断による変化の見立て

HS社のモデルではチーム(定常のチームであれ、プロジェクトチームであれ)のパフォーマンス(彼らの言葉では「シナジー効果による問題解決モデル」)は次のようなモデルで示される。

このモデルで彼のチームのスタイル(現状)を診断し、そのスタイルがなぜ起きているのかを分析していった。

このスタイル診断では、建設的スタイル(青の領域)は多い方が良く、防衛的スタイル(緑、赤)は少ない方が良いとされる。例えば1次プロセスを特徴づける、気になる象限(エリア)を特定し、そのスタイルの質問項目を読み込んでいく。 例えば 「アイディアはすぐに反対された(考慮対象の代替案のリストに加えられることなく)」 「非現実的に、または不必要に正確さを求める傾向があった」 「特定のメンバーが、その人の相対的な知識や技能を大きく上回る影響力を持った」 など。グループで特徴的な行動(パターン)を考慮していく。そしてその行動(パターン)は何故起きるのか?グループの外からどういう力が働いているのか?グループ内の関係性はどういう相互作用をおこしているのか?など具体的な行動環境(関係者マップやビジネスプロセス含む)をCR(Consensus Reality:合意的現実)レベルでまずは分析していく。

これを行うことで、なぜ理想とする行動(2次プロセス)が起きないのか、具体的な対立軸が浮かび上がってくる。 Mさんの場合は商品企画担当と商品開発担当の間に、「きちんとした仕様書を書けよ!」「内部の技術マップが見える化されていないので書きようがない!」のような両者の心の声が存在していないか、DL(Dream Land:情念)レベルを見ていく。うまく行っていない場合は、両者の間に対立(葛藤)をエスカレートするパターンがあるのが普通なので、それをシステミックに理解する。 両者が現在のパターン(1次プロセス)を起こしている理由(それぞれの言い分の背後にある信念・価値観)を見て、相手がそれぞれの1次プロセスを尊重する(声を聞いてもらう)とエスカレートは鎮静に向かうため、その状態から両者にとってより良い状態に向かうために、どういう新たな協力関係を結ぶかを探求することになる。

この記事を書いた人

代表取締役

松田栄一(Eiichi Matsuda)

東京大学経済学部卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)に入社。NTTグループのシンクタンクである情報通信総合研究所に出向し、主に日米電気通信事業者の資本政策や管理会計に関する調査研究・コンサルティングに携わる。その後、NTTにおいて海外進出時のブランド戦略、NTTコミュニケーションズ設立時の広告戦略を手がけた後、MBA教教育を手がけるグロービスにて企業内研修部門マーケティング統括リーダーを努める他、戦略、マーケティング等の講師を務める。現在はバランスト・グロース代表として組織開発コンサルティング、エグゼクティブコーチングを行う。

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