スティーブン博士の7つの教え〜プロセスワークと組織開発〜
米プロセスワーク研究所の前所長であり、私たちに多くの知恵を授けてくれる弊社特別顧問のスティーブン博士の教えをまとめています。
スティーブンは個人的に米国で大学院生をしている頃の私のアドバイザーであり、師弟関係から学ぶ部分が大きいプロセスワークの文字通りの師匠となります。弟子でもあった視点から、大企業の組織変革やエグゼクティブコーチングなど世界中でプロセスワークを実践してきた百戦錬磨の長老の教えを言葉にしてみました。
#組織開発 2014/02/25
このコラムでは組織の経営者、人事の方が「組織開発」とは何かの大枠を理解いただくためのガイドとして連載していく。
INDEX
私が人材・組織開発コンサルタントの道を歩み始めて丸12年が過ぎようとしている。 組織開発コンサルタントとは、「組織の構成員が自分の中の最高のものを出し合える、引き出し合える、個人の力を越えた素晴らしいものを創造できる、そしてそこに至る道のりを愛し、楽しみながら人と組織が成長=変容する」ことをサポートするコーチ的存在だ。
そして、組織が変容の旅を始めるとき、その度が実りあるものになるかならないかは私たちコンサルタント以上に、カウンターパートのクライアント企業の経営者の方や事務局となる人事の方が鍵とだと感じる。
私が今回コラムを書こうと思ったのは、カウンターパートの経営者人事の方々が組織開発等領域に関心を持ち、社内組織開発コンサルタントとしての旅を始めて貰いたいという願いからだ。時に協業という形を取る事もあるかもしれないし、人と組織のダイナミズムとう永遠のテーマを探求する勉強会仲間という形もあるかもしれない。そうして、組織開発と言う旅を楽しむ仲間が増えれば本当に嬉しい限りだ。
このコラムでは組織の経営者、人事の方が「組織開発」とは何かの大枠を理解いただくためのガイドとして連載していくつもりである。
このシリーズの構成は以下を予定している。
・組織開発とは何か(今回)
(1)ODの定義
(2)ODコンサルテーションのアプローチ
(3)ODで使う主要な理論
(4)ODが扱うもの(テーマ)
・組織開発プロセスで使う道具を俯瞰する
・企業事例
・組織開発コンサルタントになるための勉強方法(文献、団体)
日本ではODのテキストと言えるものが殆どないが、米国ではODを体系的に解説したテキストは沢山存在する。(もちろん専門の大学院コースもある) その殆どのテキストの第1章は「ODとは何か?」の定義論に数十ページがついやされるのだが、結論が「ODの定義は複雑、曖昧で、合意された共通の定義はない」で締めくくられている。
日本の人材、組織開発に関係する人達の間で比較的共有されている定義はMcLaganが1989年にASTD(American Society for Training & Development)に提出した下記カテゴリーが比較的有名である
人材開発HRD
○Training&development
○Organization Development
○Career Development
・Organization /job Design
・Human resource planning
・Performance management sysytem
・Selection and Staffing
人的資源管理HRM
○HR reserch & information systems
○Union/ labor relations
○Employee assistance
○Compensation/benefits
・Organization / job design
・HR planning
・Performance mgt systems
・Selection & staffing
「広義のHRDには3つの柱がある。能力開発、キャリア開発、組織開発(OD)」の出元はこの人。しかし、ODの専門団体であるODNとODIは独立した領域と主張してきた。その他の団体は、自分の領域の部分集合と主張している。(AHRD,AOM,ASTD,SHARM,SIOP,UFHRD)
定義の話は早々に切り上げ、ODプロセスと介入の全体観を把握してもらうのが全体を把握する近道である。 ODの父と呼ばれているクルト・レヴィン氏の古典的なODプロセスは問題定義と診断→アクションプランニング(介入の設計)→実行→評価であるが、その中の介入(Intervention)のパートを俯瞰するのが全体像を把握しやすい。

・個人への介入の代表例は研修やコーチング
・チームへの介入の代表例はチーム合宿(オフサイトミーティング、アウティング、ワークショップ)やチームコーチング
・組織への介入の代表例は全社組織サーベイだったり、様々な介入プロジェクトを組織全体としてどう展開していくかを設計することである。
例えて言うなら、点への働きかけ、線への働きかけ、面への働きかけを複合的に用いるのがODだ。
ODでは”With a hammer in your hand , the whole world looks like a nail”という言葉が有名だが、この全体像を把握していないと、どの問題症状にも同じ道具、例えば「それは全て論理思考力強化」で解決するように見えてしまうので注意が必要だ。(同じように、「それは全てODアプローチで上手く行きます」のように見えてしまうパラドックスでもある。自戒を込めて。。) 介入の目的を考えてから、意識的に介入手法を意識的に選択することが重要だが、この辺りは次回に詳述してみたい。 また、コンサルティングのスタイルも経営コンサルティングとは大きく異なり、プロセスコンサルテーションと呼ばれるアプローチをとる事が多い。

MBAでは組織の中でのリーダーシップをテーマにした「組織行動学」がODの理論的バックボーンである。

極めて幅広い領域を参照しながら複合的に発展してきた事が分かるが、次のようその成り立ち(歴史)も面白いので俯瞰しておく。

社内ODコンサルタントになるためにこの歴史に出てきた理論やワークを全て辿らなければならないわけではなく、まずはODコンサルタントの2大セオリーを押さえておくのが良いと思う。
その2大理論とはピーター・センゲ氏らが提唱するシステムシンキング(システム理論)とアーノルド・ミンデル氏が創始者のプロセスワーク(PW:プロセス志向心理学)である。
それぞれを自分の使える技術(スキル)まで高めるには、本格的にトレーニングする必要があるが、知識として理解する事はコラムでもできるので、次回以降のコラムでもご紹介して行きたい。
ODコンサルティングが得意とするテーマには次のようなものがある。
・組織のビジョン・ミッションを改めて明確にしたい又は浸透したい
・組織文化を変えたい
・学習する組織にしたい
・戦略計画の作成と主要メンバーへの共有を同時に行いたい
・戦略コンサルタントが作成した経営戦略を社員に納得させて実行に移させたい
・組織内の多様な人々がより建設的に協業できるような環境を作りたい
・M&A後に組織融合を図りたい
・人事制度変更後に、期待する新たな行動を納得して起こさせたい
・社員活性化を図りたい
・エグゼクティブの意識を変えたい
・組織の関係性が建設的ではない原因が、誰か特定の人のリーダーシップではなく、トップ‐中間管理職‐スタッフ其々のリーダーシップにある etc
このように、ODは組織に関するかなり広範なテーマを扱う。
今回のコラムは導入という位置づけだが、その広さと深さについて皆さんの興味を多少なりとも掻立てることができたのであれば幸いである。 もし「えらい大変そうだな〜」とドン引き気味になってしまったとしても、次回以降、は事例等もご紹介しながら少しでも分かりやすく連載を続けて行きたいと思っている。また出来るだけ皆さんの関心や疑問にお答えしていきたいので、是非質問やコメント等もお気軽にお寄せ頂ければ幸いだ。
OTEHR
米プロセスワーク研究所の前所長であり、私たちに多くの知恵を授けてくれる弊社特別顧問のスティーブン博士の教えをまとめています。
スティーブンは個人的に米国で大学院生をしている頃の私のアドバイザーであり、師弟関係から学ぶ部分が大きいプロセスワークの文字通りの師匠となります。弟子でもあった視点から、大企業の組織変革やエグゼクティブコーチングなど世界中でプロセスワークを実践してきた百戦錬磨の長老の教えを言葉にしてみました。
プロセスワーク創始者であるアーノルド・ミンデル本人によるワールドワークを始めとしたプロセスワークの各種コンセプトの解説。
南北アイルランドでの紛争のワーク、ヒラリー・クリントンと黒人男性の仮想ロールスイッチを演じるミンデル、ワールドワーク誕生秘話、もしカール・ユングがワールドワークを見たら、など、奥深い学びが満載です。
アーノルド・ミンデルと共にプロセスワークを育んできたシュバック博士のインタビュー動画を掲載しています。