#ミドルリーダー

経済産業省が挑む組織経営改革ー1on1は組織ミッションと個人の情熱をつなぐ「結節点」。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)実現のために、マネジメントの型を変え、個人の能力を発揮できる組織文化にアップデートする

社名
経済産業省
業界
官公庁
対象組織
ミドルリーダー
対象人数
1,000名程度

経済産業省が掲げる「組織経営改革」。その核心にあるのは、限られた人的リソースで、いかに国民の期待に応える成果を出し続けるかという切実な問いです。課題志向型の職員が多い経産省では、上司部下のコミュニケーションにおいては、専ら「課題の指摘や改善」が主流でした。組織経営改革の取り組みを進める中で、組織・職員のパフォーマンスを最大限引き出すために、「上司部下の信頼関係構築とフィードバックの質的変容」の重要性が再認識され、その手段として「1on1」に着目した取組がなされています。

本記事では、事務局として改革を牽引してきた堀さん、長山さん、戸田さんの3名に、現場マネージャーたちが「これは自分の武器になる」と実感するまでのプロセスと、組織に起き始めた変化とチャレンジについて詳しく伺いました。

INDEX

写真左から、堀達也さん、長山美由貴さん、戸田悠子さん(以下、プロフィール)

インタビュー参加者(インタビューが行われた2026年1月時点)

◾️堀達也さん
大臣官房秘書課 課長補佐(総括担当)
(併)経済産業研究所コンサルティングフェロー
2011年入省。2024年6月に秘書課(省内の人事施策に関する部署)に着任し、「組織経営改革」に関する企画立案・推進(組織文化醸成の取組、組織サーベイの実施・運用等)を担当。

◾️長山美由貴さん
経済産業政策局 地域産業基盤整備課 課長補佐(総括)
(併)沖縄振興室長補佐
2011年入省。2023年6月に秘書課に着任し、「組織経営改革」のマネジメント研修の強化等を担当、1on1マネジメント研修を立ち上げ。現在は、地域産業政策に従事し、総括補佐として課の運営にも携わる。

◾️戸田悠子さん
大臣官房秘書課 課長補佐(採用・人材育成担当)
2013年入省。2025年6月に長山の後任として着任。2025年度中の経済産業省内でのマネジメント層向けの各種研修の企画調整を担当。

組織のミッション実現、パフォーマンス向上のための1on1

Q.設問まずは1on1マネジメント研修の背景から教えてください

堀さん:私たちは昨今の環境変化の中で、増大する社会の要請に応える、成果を出し続ける組織になって行く必要があります。そのためには、人材の力や組織の力をどれだけ活性化できるかが重要になってきていると考えています。その中で上司・部下の「1on1コミュニケーション」は、マネジメント強化や組織文化づくりのために、1つの重要なツールとして位置付けています。

元々の大きな背景としては、2023年頃から「組織経営改革」と銘打って、全省横断での組織改革に着手しました。2024年3月に全省で議論を行い、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定した上で、個別の施策については、①本質的課題への探索・特定・実行、②取組の土台の構築、③DX/業務効率化の推進、④人材確保能力向上、⑤多様な力のかけ合わせという5つの柱で取り組んでいます。最近ではGXやDX、経済安全保障やエネルギー分野など、経産省の政策への期待も益々大きくなる中で、時代の要請に合わせて成果を出し続ける組織になることが急務となっています。

経済産業省をはじめとした省庁では、民間企業のような売上や利益という目に見える成果指標はなく、国富・国益にどれだけ貢献するか、という観点が求められます。そのため、わかりやすいKGI・KPIのようなものを設定しにくい側面があるため、民間企業で取り組んでいただいている「人的資本経営」とは少し違いはあるかもしれません。しかし、果たすべき役割が増え、多様化する一方で、人員はすぐには増やせない、残業時間は減らしていく必要がある中で、一人ひとりが力をしっかり発揮し、組織のパフォーマンスをどのように高めるかということは、民間企業とも共通する課題ではないかと感じています。また、以前よりも国家公務員の採用を取り巻く環境が一層厳しさを増し、若い世代や外部から来られる方などを含めた多様な価値観・働き方が広がっている中で、組織の在り方を今一度見直し、いかに組織パフォーマンスを高めていくかを考える必要性が更に高まってきています。

「1on1コミュニケーション実践研修」の背景となる組織経営改革について語る堀さん

受けたことのない「1on1」に取り組むマネージャーの葛藤を支援する

Q.「1on1」という言葉は以前からも出ていましたが、なぜ改めて取り組みを強化しているのでしょうか

堀さん:「組織経営改革」を始動する前からも、「働き方改革」や「若手の価値観の変化」に直面する中で、いかに職員のやりがいを高めるか、いかに個々が力を発揮できるようにするか、いかに組織の中でのコミュニケーションを活性化させるか、といった課題はあり、その対応策の一つとして、当時から「1on1」の重要性も議論されていました。

こうした従前から行われていた議論されていた内容をまとめる形で、有志の若手~中堅職員により2023年には「METI 1on1ガイド ver1.0」がまとめられました。しかし、これを経産省において実践しようとすると、どうしても日々忙しい中で、業務の進捗確認になってしまったり、どうしても会話が続かなかったり、ガイドブックを読めば理解はできるが、「実際にどうやるのか?」が具体的にイメージできないということが課題として見えてきました。

というのは、現場マネージャーからすると、かつて自分が若手職員だった頃に「1on1」を受けたことがないわけなので、イメージがつかないのも理解できます。したがって、現場マネージャー任せとするのではなく、外部の専門家の力を借りて、研修という形で実装を支援するのがいいのではないか、という議論になりました。

長山さん:私は2023年当時、秘書課で採用・人材育成を担当していました。堀さんからもあった通り、限られた人的リソースでチームを作り、高いアウトプットを出さなければならないと、みんな頭ではわかってはいました。ただ実際どううまく人を動かしていくのか、について誰もが共通の答えを持っていたわけではありませんでした。

そもそもマネージャーとして求められるスキルについてしっかりと鍛える機会が一部のサーベイのフィードバックを除けば十分には提供されていない状況でした。新任になった時の研修も、座学形式で、マネジメントの心構えや部下との向き合い方は、教わる機会があるだけです。実践する中での迷いや悩み、自分の「クセ」と合わせてどうするか、より多くの部下やチームをついてきてもらうために改善し続けるためにどうするのがよいか、こうした問題意識に対応する支援は足りていないとの声をいただきました。

民間企業もその課題に向き合って取り組んでいるという話も聞き、従来の座学形式ではなく、すぐに使えるマネジメントをアップデートする実践型研修として「1on1 コミュニケーション実践研修」を立ち上げることになりました。

研修立ち上げ時の課題意識、組織の巻き込みのポイントについて話をする長山さん

組織を巻き込み、現場のニーズに応え、参加したい、参加しやすい環境を作る

Q.「1on1コミュニケーション実践研修」実施について、どのような工夫をしましたか?

長山さん:これまで研修でマネジメント実践スキルを学ぶという文化もなく、「結局はまた綺麗事を語られるだけでしょ」という声が出てくることも想定されたので、まず導入の仕方に気をつけました。秘書課、官房全体でコミットして、各局の筆頭課長から、この研修に出るように声掛けをしてもらい、日々の業務で相当忙しい課室長や総括補佐(各課室の課室マネジメントの一端を担う筆頭の課長補佐)に初年度から参加してもらえるように環境整備してもらったことが非常に大きかったです。

現場マネージャーとしても、参加したらいいことはわかるけど、実際行くとなると、その時間の業務を調整しなければならず、研修のために席を外すのは課室メンバーに申し訳ないという雰囲気が強いので、幹部からも背中を押してもらって、研修に出やすい雰囲気作りを心がけました。結果、初年度から100名近く参加してくださり、参加者からの評価も高く、良いスタートを切れました。

また、組織経営改革の事務局メンバーが各局との対話を密に行い、各局の課室長や総括補佐といったマネジメント層が何に困っているのかという声を聞く中で、「マネジメント力をアップデートする機会」はニーズの高い施策でしたので、これを提供できたのも大きかったと思います。本業で忙しいときに、また新たな研修を受けなければならなくなった、という雰囲気にならないように、この前提となる対話があってこそ今回は上手くいったと思います。

「研修を受ける時間がない」という声が出てくるからこそ、座学のところは本当に短くしていただき、むしろロールプレイングでのフィードバックは必要と考えて、実践型研修は2時間で設計をしました。参加しやすいように、朝早めの時間と夕方遅めの時間と、昼のお時間と、いろいろなバリエーションを用意しました。経産省内の事情にあわせて柔軟に研修を設計いただけたことで、この研修が実現できました。

実際の研修の様子。2時間という短時間で実践と振り返りを重ねていきました

「わかる」と「できる」は違う。お互いに気づきが得られる仕掛けを作る

長山さん:もう1つは「わかる」と「できる」の違いに焦点を当てたことです。私もそうなりがちですが、特に人と人のコミュニケーションは、分かった気になりがちです。実際に研修をやってみて、しっかり相手の顔を見て頷いて、気を散らさずに話を聞くみたいなことも、「そんなことは分かっているよ」と思いがちですが、果たして自分はできているか、というと違うこともあると思います。自分でも気をつけないと、例えばついつい他に意識が向いたり、チラッと時計を見たり・・・。

なので、自分ができているか、お互いにできているかをフィードバックしあって内省するまでちゃんとやると、改めて気づけることが多いですし、そこを言語化してインプットしていただけたのもありがたかったです。

戸田さん:私は、長山さんから引き継ぎ、2025年から秘書課で採用・人材育成を担当しています。実際、今マネジメントを担っている世代は、自分が過去に上司から1on1などのいわゆるマネジメントの実践手法を受けた経験がない人が多く、戸惑いも多いと思います。私も共感しますが、実際やってみると、本当にまず業務以外の話題で何を話したらいいのかわからない、そもそもプライベートの話聞いてよいのか等、やってみないとわからないことが多いと感じます。

このように、自分がこれまでにやってもらった経験がないがゆえに、ひとまず自己流でやっているが、これが正しいのかわからない、というマネージャーが省内に数多くいらっしゃいますので、実践型研修であれば、こうした悩みに答えることができます。関連して、別に行っているマネジメント層向けの研修の一環で、省内の管理職のノウハウをシェアする研修も行っていますが、うまく成果を出すことができている方々の事例や悩みをシェアしつつ、現場のマネージャー同士で経験を積んで、一緒に悩んでいる仲間と同じ場で対話をしていくというのは、研修を意味のある取組にする観点から重要ではないかと思います。

研修内での具体的な工夫や今後の展望について描く戸田さん

マネジメントが悩む具体的テーマを扱う。個別化した学びを用意する

戸田さん:実際に1on1をやる人が増えてきて、悩みの具体度が一歩上がった気もしています。今年度(2025年度)の「1on1コミュニケーション実践研修」は、新たな取り組みとして、具体的な1on1コミュニケーションでの「お困り事」を複数テーマに分け、それぞれ別日程で実践ワークショップを設定したのですが、テーマによって参加者の人数も層も全く違いました(※2024年度までの実践研修は同一内容のワークショップを複数回開催)。実際に現場で1on1を実践する人が増えたからこそ、悩みも具体的になり、実際に直面する課題が多様化している傾向が見えてきている気がしています。例えば、具体的なシチュエーションや相手のタイプ別の対応法などが、現場からのニーズとしては強いように感じています。今年度、実施していく中で、参加者の皆さんの反応やお声も踏まえて、来年度以降どうするかも考えていきたいと思っています。

長山さん:ワークショップのロールプレイ(実践演習)のテーマ立てについては、経産省のマネジメント層が、実際どこに課題感を持っているかをよく踏まえる必要があり、よくあるよね、ここは辛いよね、と考えているであろうトピック設定をどうするかをしっかり考えた記憶があります。外部の研修や書籍を読むだけだといまいちしっくりこないのは、やっぱそこなんですよね。今、自分たちが苦しいことをわかってほしい、というマネージャー側の気持ちもあるので、そこをお互いにちょっとでも吐露できるセッティングとして設計すれば、参加者の皆さんにとっては、これは自分のことだと思えて、本音も話しながら、1on1のロールプレイができる、その経験を通じて、より良い気づきや学びを得られるかなというのは、工夫したポイントの一つです。

小グループに分かれ、お互いの悩みの共有、実践とフィードバックを濃密に行っていました

フィードバックの質の変化と賞賛文化によるエンゲージメント向上

Q.ここまでの取り組みを経て、どのような変化・成果を感じていますか?

堀さん:組織経営改革の中で、「マネジメント支援の強化」に取り組み始めてから、明らかに「フィードバック」を意識的に実施している傾向が見られており、エンゲージメント調査の中でも数字に現れてきています。実は、組織経営改革以前には、経産省内では「フィードバック」という言葉はほとんど使われていませんでした。かつての経産省の「フィードバック」は、上司が問題ないと思ったところは特段コメントをせず、直すべきところだけを詰めることで仕事の完成度を高めていく、というやりかたが中心で、ポジティブなフィードバックが行われる機会は日常的ではなかったと思います。経産省の職員の傾向としても、「課題志向型」の方が多いので、そうしたフィードバックを受ける側も違和感がなかったのです。しかし、価値観の多様化に対応し、職員が生き生きと働き、仕事の質を更に高めていく観点からは、これだけでは十分ではありません。

研修の取組の成果もあり、例えば「ありがとう」「こういうところが良かったね」といったポジティブなフィードバックをした上で、その上で課題を指摘するというフィードバックの仕方を意識する現場マネージャーが増えてきたのではないかと思います。元々意識してやってくれる方は、日頃からやっていると思いますが、そうでない人にとっては、ポジティブなフィードバックに意味を見いだせていないところがあったのですが、徐々に現場で広がっていくうちに、肯定的な空気感が醸成されてきており、組織文化としてすごく変わってきていると思います。

先ほどご紹介したようにエンゲージメント調査では、「自分の仕事が組織の中で賞賛・評価されているか」という設問を設けていますが、この数年でその数値が上がってきています。「フィードバック」という言葉自体も広がってきており、実際に昨年実施したアンケート結果では、約7割の現場マネージャーがフィードバックを実施していると回答し、部下からも「満足している」という回答が多くなりました。今年度は、「人事評価」のタイミングで、上司がしっかりフィードバックをすることを奨励しておりますが、職員アンケート結果によれば、多くの職員が上司から十分なフィードバックを受けられたと回答しており、非常に良い傾向になってきていると感じます。

長山さん:堀さんからあった「フィードバック」とか「讃え合う文化」もそうですし、ちゃんと部下の状況を見てマネジメントを個別に合わせていくということについて、経産省の中である程度共通認識ができた、その機会を設けられた、というのは一つ辿り着くことができた成果だと思っています。他の仕掛けも含めた総合技ではありますが、1on1コミュニケーション実践研修を通じて、私もそこに貢献でき、嬉しく思います。

組織の変化・成果についてお互いに共有する堀さん、長山さん、戸田さん

継続、共有、調整。サイクルを回して「組織文化」として定着させる

Q.今後の展開に向けて、課題として感じられている部分はありますか?

長山さん:経産省でよくありがちなこととして、成果が一定上がってきたところで良しとしてしまって、次にすぐまた違う取組に目が移ってしまうことがあります。そうはならずに、いかに長く継続していけるかが大事だと思っています。若い人が新しくマネージャーになると、同じような課題は発生し続けるし、新しいマネジメント規模を持つようになると新しい課題が出てくるので、そこから手を引かない、手を抜かないで取り組んでいってほしいと思っています。

堀さん:組織経営改革の深化という点では、当初は幹部が中心になって危機感・問題意識を持って取り組み始めたのですが、今は各局・各課室の幹部やマネージャーにとってもそれが当たり前になり、部局毎に様々な取組がなされてきています。組織の力を高めるために、人材育成や業務改革をはじめとして、多様な仕掛けを掛け合わせることへの意識も高まり、組織サーベイの結果も上がってきています。

まずはこうした取組をしっかり日常に定着させていく、「組織文化」としていくことが大事だと考えています。新しく皆で取り組んで成果が上がってきた施策を、きっちりと当たり前の日常にしていくことが重要です。1on1やフィードバックと同じように定着してきた取組として、毎年の幹部異動等の後に実施する「夏のチームアップ月間」という取組があります。毎年この時期になったら、幹部から現場の課室員に至るまで、皆で組織をいかによくしていくかを議論するとか、現場マネージャーはマネジメント能力を高め、課室のマネジメントをどうするかをしっかり考えるとか、こういうことをサイクルとして毎年回していくことを定着させていきたいと思っています。

また、「働きやすさ」と「働きがい」の両立は、2017年から取り組んでいる課題であり、今でも重要な課題です。働きやすい組織には少しずつ変わってきていますが、経産省が求められる役割が高まってきている中で、組織経営改革の本来の目的である「本質的な政策課題に取り組み成果を出す組織を作っていく」ことが最も重要な課題として意識されてきています。

組織としてのインフラ・環境・ルールが整ってきている中で、本質的な課題にチャレンジしていける環境作りはまだまだ続けていかなければなりません。報道などで話題になるような政策のフロントで日々奮闘している方々もおられますが、その一方で我が国にとって欠かせないインフラ・制度を支えている審査・執行業務に関わる方々、またそうした経産省職員を支えるバックオフィスに関わる方々も含めて、誰もが目の前の「本質的な課題」に取り組めるようにしていく必要があります。職員一人ひとりが意識的に、自分の本質的な課題は何か、自分に何が出来るのか、「未来に誇れる日本を作る」という経済産業省のミッションに向けてどう貢献していくかを、一人ひとりが意識して業務に関わることが出来る環境を作っていかなければならない-これが自分にとって取り組まなければならない「本質的な課題」なのだろう、と考えています。

戸田さん:まだマネジメント層の中にも濃淡はありますが、マネジメントにしっかり取り組んでいる方は、実際に業務面においても顕著な成果をあげてきており、ここ数年でそうした現場マネージャーの方々が増えてきたと思います。一方で、まだ十分にキャッチアップできていない人もいて、私のようにしばらく外部機関に出向しており、経産省の本省外に在籍していた人も含め、「組織経営改革って何?」みたいな方もまだまだおられます。幹部の方々も含めて、そういう方にとってはゼロからのスタートだと思いますし、職員によっても取り組みに濃淡がある中で、コンスタントにこういうことを普及させ続けていくのは必要だと感じています。それと同時に、マネジメントに意識して取り組んで、一歩も二歩も先に進んでいる方々にもアジャストしていけるようなコンテンツにしていくことも大事です。そのような過渡期にあるのかなという印象です。

長山さん:私も大きな文脈の中で、1on1はどういう効果を発揮するのか、1on1としてはどういうことを狙っていくのか、一人一人の力を発揮させるとか、組織を良くしていくということは、少しずつ変わってきているように感じます。だからこそ、続けていくこと、忘れないでいくこと、それが本質的課題につながっていくということを、ちゃんと見せることが大事だと思います。組織が良くなったというところを、みんなで確認しながら進んでいくのがすごく大切だと感じています。

ミドルの当事者でもあるお三方。ご自身のリアルな体験も交え、未来について語ってくれました

1on1からチームとしての取り組みへ。組織の成果へ繋げていく

Q.さらなる展開へ向けて、どのような理想を描いていますか

堀さん:私自身、現場の部署から現在の部署に異動してきて、本当に各組織・部署において自走していくことの大事さを改めて感じます。その際、単に課室長や総括補佐、現場の班長だけがマネジメントをするのではなく、メンバー同士でチームビルディングに取り組んだり、外部の方と一緒にプロジェクトを作って進めていくことも多いと思います。そうした場面においても、「1on1」自体が有効な局面があり、色々な階層でエンジンが働き出す大きな仕掛けの一つになると思います。最終目的の組織のアウトプットをしっかり出していくためには、まだまだやらければならないことも多いので、組織経営改革の中で、しっかりと必要な取り組みを続けていきたいと思います。

長山さん:私も今は地域経済・産業の政策に携わっていますが、法律の検討から予算の執行まで色々なものがあり、それぞれ担当に任されています。みんなで力を発揮していかないと成り立たないと日々感じています。自分自身も心がけたいですし、まだまだ組織のポテンシャルを発揮できると思っているところです。

戸田さん:ここまで整えてきた土台があるので、次は成果を出すところに一段ギアを上げていく必要があると思います。今後、組織全体としてさらなる成果創出に向けて動いていく中で、マネジメントスキル支援のコンテンツは、「個人でやるよりもチーム全体でやった方がより大きな成果が出せる」その土台としてのマネジメント力向上なんだ、というところを定着させていきたいです。

そのベーススキルが「1on1」だと思います。日々やることによってチーム力が上がるし、大きな成果につながるという話をストーリー立てて浸透させ、省内で取り組んでいる管理職から実体験として定着していってもらうことが、今後大事になってくる、と今日の場を通じて感じました。

秘書課や組織経営改革のコアメンバーたちと、現場マネージャーの皆さんとの間では、まだ少し距離がある部分もあります。現場からは、本業が忙しくて、そこまで気にしていられない、という声も聞かれる中で、様々な働き方を希望する職員の皆さんの希望も聞きながらマネジメントして、チームとして進めていくことが、成果を上げるための近道なのだということを、皆さんに腹落ちしてもらうことが大切だと思います。さらに出向者や外部の方も多いので、そうした方々からの声も拾い上げて、草の根で実体験を持って語れる人たちの数を増やしていきたいです。

2年おきに異動があることも含め、上手なマネジメントによって成果が上がるというケースが目に見えて出てくるようになり、マネジメント面の評価もされるようになってきています。成果とマネジメントが結びついていることがわかってくると、より真剣にマネジメントに取り組む方も増えると思っています。そこに一本の筋が通ると、マネジメントが文化として定着して、「チームづくり」がまず第一のミッションということが浸透してくると感じています。そうした理解がまだちょっと揺らいでたり、まだ定着しきっていない部分もあるので、ここから2~3年かけて、しっかりやっていけると良いと思っています。

編集後記:「1on1」は組織ミッションと個人の情熱を結びつける「結節点」

本インタビューを通じて強く感じたのは、組織開発における1on1の成功は、単なるスキルの習得ではなく「文脈(ナラティブ)の接続」にあるということです。

多くの組織で1on1が形骸化する原因は、それが「現場の悩み」や「追いかけている成果」と切り離された「人事の施策」になってしまうことにあります。しかし、経産省の事例では、人事担当部署が、現場のマネージャーが日々直面する「限られた人員で高いアウトプットを出す必要性」「構成メンバーや価値観の多様化」という実際の悩みに徹底的に寄り添い、そこを突破するための「一つのツール」として1on1を提示しました。

1on1は、魔法の杖ではありません。しかし、組織のミッションと個人の情熱を結びつける「最も泥臭く、最も強力な結節点」になり得ます。今回の経産省の歩みは、民間・官公庁を問わず、変革に挑むすべてのリーダーにとって、勇気ある指針となるはずです。

担当コンサルタント

コンサルタント

岡田美紀子(Mikiko Okada)

リクルートエージェント(現リクルートキャリア)や、外資系企業(GE、ユニリーバ、等)日本法人にて、通算20年以上に渡り、戦略人事、採用、組織・人材開発、キャリア開発、リーダーシップ開発、などに取り組む。近年は、ポジティブ心理学とプロセス指向心理学を基盤として、個人と組織の強みを引き出し、能力開発・成長支援・変革を実現できるようにコーチングや組織開発を行っている。

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