#組織開発 2014/04/22

組織開発とは〜組織開発で使う道具を俯瞰する(前半)〜

  • 組織診断
  • 組織開発コーチング

今回は組織開発で使う道具を俯瞰する(前半)として診断フェーズ(「データ収集」と「分析」)で使う道具を中心に見て行きたい。

INDEX

組織開発プロセスで使う道具を俯瞰する

今回は以下の3つのついて俯瞰してみる。

1.ODコンサルテーション基本フェーズ
2.情報収集〜5つのタイプ
3.分析のフレームワーク

1.ODコンサルテーション基本フェーズ

テキストによってODコンサルティングのフェーズの定義に若干の違いはあるが、ここに掲載した2つのモデルが一般的である。この右の図でいうと今回はData Gathering(データ収集)とAnalysis(分析)の部分をカバーする。

図:ODコンサルテーション基本フェーズ

2.情報収集〜5つのタイプ

ODの情報収集には5つのタイプがあり、通常は目的に応じてこの中の2つ程度を使う。

(1)個別インタビュー

主要関係者※への個別インタビューは必ず行なう。サーベイでは得られない貴重な定性データが得られるだけではなく、キーマンとの信頼関係づくりや介入フェーズでどのように立ち回って欲しいか等、こちらの意向を伝えて味方に引き込める。 目的と時間/予算制約の中で極力多くの人にインタビューする方が良い。

例えば、問題となっているチームを診断したいのであれば、そのチームの関係者全員とそのチームを取り巻く主要ステークホルダーにインタビューするのが望ましいが、最低限コンタクトしてくる人事や経営企画の方と、問題となっている対象チーム(組織全体の事もある)のキーマン2、3名にインタビューする。

また、ちょっと変わった方法としてスノーボール方式もある。一般に、文化人類学や地域調査などのフィールドワークなどで採用される調査対象者の選出方法である。つまり、すでに接触があり、ラ ポールが形成されているインフォーマントを軸に、その人的ネットワークを手繰って、調査目的に適した対象者を雪だるま式に選出していく方法だ。

(2)フォーカスグループインタビュー

5-15人を1グループとして集めて、ファシリテーターがヒアリングする。この方法のメリットは個別インタビューよりコストと時間が節約できるのと、参加者がお互いの意見に触発されて沢山の意見を積み上げて集められる可能性があること。

(3)サーベイ/ アンケート

インタビュー/フォーカスグループの後に使うことも多い。後述する組織診断モデルを元に質問を作ることも多い。

我々であれば、米HSI社の組織文化診断やリーダーシップサーベイ等と、定性アンケートを組み合わせて使う事が多い。 HSI社のツールのメリットは、第1に個人の内面と組織文化(マッキンゼーの7Sモデルで言うと「Style(リーダーシップのスタイル)」と「Shared Value(組織文化)」)が同じ円環図で分かること、第2にWebにおける大規模なサーベイで使うことも、ワークショップのその場で紙上で診断してすぐに結果を見ることもできること、第3に世界的に有名なツールであり、多言語対応なところである。(弱点は、日本語訳がこなれていないこと。多くの海外サーベイ共通の宿命でもある)

有名なサーベイツールの中に、個人のタイプを知るMBTI、ハーマンモデル(又は効き脳診断)、ストレングスファインダー、インサイト等があるが、個人への介入(研修、コーチング)であったり、組織/チームへの介入の中でチームビルディング要素で使う事はあるが、組織診断で課題を抽出する目的ではあまり使わない。

サーベイ一覧(バランスト・グロースまとめ)

(4)観察

職場や会議の様子を実際に観察する。交わされている言葉だけでなく、非言語のシグナル(雰囲気、表情など)も観察する

(5)間接的データ(非影響的測定:Unobtrusive measures)

1. 歴史的データ
2. 公式資料;財務資料、HR資料(職務記述書、目的とゴール、人事資料、議事録等)
3. データベース(顧客、財務、従業員記録)
4. 物理的職場環境;
・構造と意味(配置、建物の作り、ロビーの家具)
・作業エリアのデザイン、会議スペース)
・食堂、休憩室、カフェテリア
・ポスター、写真、絵画
・服装、ユニフォーム
・使用言語(ストーリーや比喩を含む)

(※)主要関係者例 ODプロジェクトの意思決定者 意思決定者に大きな影響があり直接アクセスできる人/グループ 変革の鍵を握る実行者(チェンジエージェント:CA) CAに影響を与える人(CAの上司、部下など)

3.分析〜集めた情報を用いて分析する

個人–チームーチーム間–組織全体といったミクロからマクロの各レベルにおいて何が起きているか(タスク面、人間関係面においてどういう状況にいるのか)を見て行き、「強みと課題」に関する仮説をたてる。   マクロ面つまり組織全体レベルを分析する上でよく使われるフレームワークとしてここでは3つほど掲載する。夫々の詳しい使い方やその他の組織分析フレームワークに興味のある方は、「リーダーのためのメンタルモデル活用術―人間と組織を理解する70のモデル(春秋社)」等の書籍をご参照頂きたい。

(1)Force Field Analysis (Kurt Lewin1951)

(2) Congruence Model (Nadler-Tushman1983)~組織行動診断モデル

(3)Weisbord’s Six-box Model

一方、ミクロに見て行くやり方はコンサルタントによって様々だと思うが、我々であればプロセスワークの考え方を持ち込むことが多い。(プロセスワークの考え方を用いた分析については別途コラムで書きたいと思う) このようなステップで、情報を収集し、分析する(組織の見立てを行なう)訳だが、本号ではツールの俯瞰にとどめ、具体的なイメージは事例紹介の回を御持ち頂ければと思う。

なお、次号は介入手法を俯瞰していきたい。

この記事を書いた人

代表取締役

松田栄一(Eiichi Matsuda)

東京大学経済学部卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)に入社。NTTグループのシンクタンクである情報通信総合研究所に出向し、主に日米電気通信事業者の資本政策や管理会計に関する調査研究・コンサルティングに携わる。その後、NTTにおいて海外進出時のブランド戦略、NTTコミュニケーションズ設立時の広告戦略を手がけた後、MBA教教育を手がけるグロービスにて企業内研修部門マーケティング統括リーダーを努める他、戦略、マーケティング等の講師を務める。現在はバランスト・グロース代表として組織開発コンサルティング、エグゼクティブコーチングを行う。

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