VRIO

経営戦略

VRIO(ヴリオ、ブリオ)とは、オハイオ州立大学のバーニー教授が提唱している戦略理論です。VRIOについて詳しく解説する前に、その土台となっている考え方、リソース・ベースト・ビュー(資源アプローチ)について述べましょう。

経営戦略論の大御所であるマイケル・ポーターは、5つの力で業界の構造をとらえ、理想的な立ち位置を3類型(コストリーダーシップ、差別化、集中化)から選択すべきであると説きました。また、PEST分析で政治、経済、社会、技術といった外部環境の変化を把握し、それに適合したビジネスチャンスをとらえようとする考え方も、同じ仲間です。これらは企業の外部にある状況をふまえて、「良い場所」を取ろうとしている点から、ポジショニング・アプローチと呼ばれます(マーケティングにおけるポジショニングとはまったく別の概念なので留意が必要です)。

バーニーは、ポーターらの考え方、すなわちポジショニング・アプローチには「自社がどんな会社であるかという点が欠如している」と考えました。そこに力点を置いて戦略を構築してゆこうという考え方がリソース・ベースト・ビュー(資源アプローチ)です。

VRIOとは、競争に打ち勝つために自社が保有しているリソース・経営資源がどの程度優れているのかを判断するためのフレームワークです。

V:価値があるか(Valuable)
R:希少か(Rare)
I:模倣困難か(Inimitable)
O:組織化されているか(Organized)

バーニーの考え方としては、これら4つは独立した評価項目ではなく、フローチャートの分岐点です。NOが入るとそこで終わりになり、競争優位の意味合いが示されます。

【私の考察】

ポーターに代表される、「外部環境だけから戦略を構築する」考え方は不十分であり、内部の経営資源にも着目すべきであるというバーニーの指摘は、なるほどと思わせるものがあります。

が、実際はコインを「表から見る」と「裏から見る」と同類の違いに過ぎないともいえます。ポーターの3類型は内部のリソースを無視して使うことは出来ません。例えば、規模の小さい会社がユニクロやマクドナルドのようなコストリーダーシップをとることは不可能です。また、技術力やブランド力を保有しない会社が差別化というポジションをとることは出来ません。業界1位の規模を持つ会社には、集中化は原理上無理です。別の言い方をすると、ポーターも内部環境(経営資源)を考慮しているわけです。

また、バーニーの資源アプローチも、外部環境と切り離すことは不可能です。例えば、東京海上というブランドは、価値があり、希少であり、当然ながら他の損保が真似をすることは出来ません。ところが、東京海上が海外に進出したとしたらどうでしょう。その社名によるブランドイメージは、ほとんど価値を持たないはずです。また非常に高い品質を誇り、それが国内では価値を持つ企業があったとします。この会社が品質にこだわりのない国へ進出したら、それが過剰品質となり、単なる高コスト体質の企業になり下がるかもしれません。企業のリソースの価値は、外部環境との関係によって決まってくるわけです。別の言い方をすると、バーニーも外部環境を考慮しているわけです。

となるとバーニーのリソース・ベースト・ビュー(資源アプローチ)は、コペルニクス的転回のような大発見ではなく、数ある戦略フレームに、もうひとつ有用なものが加わったと見るのが妥当でしょう。

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