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2016年02月23日 新井 宏征 [バランスト・グロース コンサルタント]

適応を要する課題への対応をどうすべきか? 序章:「変わる」ことに対する誤解 ?

今月から新しく始めるこの連載「適応を要する課題への対応をどうすべきか?」については、弊社小島の先の記事を読んでいただくと、その意図を理解していただけると思います。私の記事では、小島の記事を受けて(あたかもワークショップでコ・ファシリテーションをしているようなイメージで)その意図を自分なりに解釈してお伝えしたいと思います。

同時に、このようなテーマを扱う際、私たちが何気なく使ってしまっている「変わる」という言葉の扱いを改めて整理することから始めることは大事なのではないかと思っています。

そこで、少々回りくどいかもしれませんが、変わるということについての整理をすることで、この連載に通っている「軸」のようなものを理解していただければと思っています。


●適応を要する課題を改めて考える

小島の記事では、技術的な課題と適応を要する課題の違いを改めて理解していただきました。ここでは、連載のテーマでもある「適応を要する課題」を深く理解していただくため、これらの区別を最初に言いだしたハーバード大学のロナルド・A・ハイフェッツ氏らによる『最前線のリーダーシップ』の定義を引用します。

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いくらその道の権威や専門家であっても、既成の手段では解決できない問題も存在する。こうした問題に対応するには、組織あるいは地域社会の至る所で、実験的な取り組み、新たな発見、そしてそれに基づく行動の修正を繰り返さなければならない。本書では、これを「適応を必要とする問題」と呼ぶ。

価値観、考え方、日々の行動を見直して、自らを新しい環境に適応させられなければ、新しい環境で生き残り、成功することはできない。組織や社会がそうした適応を繰り返せるかどうかは、1人ひとりが変化を自分自身の問題としてとらえられるかどうかにかかっている。

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このように適応を要する課題(ハイフェッツ本では「適応を必要とする問題」という訳語)とは、試行錯誤を繰り返しながら思考と行動を改めなくては対処できない課題であるということ。そして、その対応をする単位は「チーム」や「組織」ではなく「自分自身の問題としてとらえる」ことが重要だと言っています。

これは小島の文にも書かれていた「自分自身を変える」ということにつながる話しです。


●「変わる」ことに対する誤解

そこで、この連載では自分自身を変えるということを中心に、その周辺にあるさまざまなテーマを扱っていくことになるのですが、その前に「変わる」という言葉にまつわる誤解を解いていくことから始めたいと思います。

現在のような不確実な時代、組織や個人の話しをする際に、「変わる」という言葉が出ない場面はなかなかありません。私たちコンサルタントも、ともすれば安易に、この言葉を使ってしまっています。

そして、そのような無自覚な状態が、時には残酷な状態を引き起こしてしまうことにもなります。例えば、「○○は全然変わらない」というような言葉が誰かに向けて投げかけられてしまうような状況です。

なぜそんなことが起きてしまうのか。それは「変わる」という言葉についての誤解に関係しています。

多くの人は「変わる」ことを、スイッチのON/OFFのようにとらえてしまいます。ボタンを押せばついていなかったライトがつく。そういうデジタルな状態の移り変わりが「変わる」ことなのだと思い込んでしまっています。

その上で、ライトがつくがごとく明快な状態の移り変わりがない人や組織を見て「全然変わらない」と思ってしまい、時にはそれを口に出してしまうのです。

しかし、実際には「変わる」ということは、そんなにわかりやすいデジタルなものではありません。もっとアナログで、グラデーションのように徐々に移り変わっていくもの、それが「変わる」ということです。最近では調光できるライトも珍しくありませんが、暗い状態から明るい状態に徐々に移り変わっていく、それが「変わる」ということです。

言い換えれば、「変わる」ということは、0から1に瞬時に移り変わるものではなく、0だったものが、0.00001になり、0.00002になり...というように、徐々に徐々に移り変わっていくものです。

この0.00001や0.00002の状態、つまり変化の過程の状態は、差分があまりにも小さいため、本人も周りも変化している実感を持ちにくいのです。そして、その状態を0か1かのデジタルでとらえてしまうと、「変わってない」ととらえてしまう、これが「変わる」ことについての誤解です。


●誤解がもたらす二次リスク

あるリスクに対処したことによって、新たに生まれるリスクを二次リスクと呼びます。

変わろうとしている組織が、ここまで紹介した「変わる」ことについての誤解を持っているがために生じてしまった二次リスクを、私たちは山のように見てきました。事象としてはさまざまなものがありますが、一般化すると、次の2つにまとめられます。

  • 手法やツールを次々と変えてしまう
  • 現状にとどまることを良しとしてしまう


最初の「手法やツールを次々と変えてしまう」は、「変わる」取り組みをしているにもかかわらず、0.00001や0.00002の状態にとどまることができずに変わることができなかったと判断してしまい、利用している手法やツールを別のものにしまうという状況です。

別のものにしてしまったことによって、取り組みはまた0からのスタートとなり、今後も変化を実感できず別の手法やツールに鞍替えして...というループを延々と繰り返してしまうという状況です。

次の「現状にとどまることを良しとしてしまう」は、同じように変わる取り組みの過程の状態にしびれを切らし、「結局、今の状態で良いのだ」と変わらないことを肯定してしまう状況です。

これらの二次リスクは個別に起きるものというよりは、前者の状態、つまり次々といろいろなものを試した結果、効果を実感できず、後者の状態、つまり「変わる」ことそのものをあきらめてしまうという形で、段階的に起きる場合が多いのです。


●現状と変わった後の間にあるもの

それでは、先ほど紹介したような状態に陥らないようにするためには、どうすれば良いのでしょうか。

そのための具体的な考え方や手法は、この連載をとおして紹介していきますが、原理原則として言えるのは「変わるまでの定まらない状態にとどまる勇気を持つこと」ではないかと思うのです。

ここで突然「勇気を持つ」などという表現を使うと、曖昧で、根性論のような印象を受ける人もいるかもしれません。もし「勇気を持つ」という表現がスッと入ってこないのであれば「決意をする」とか「覚悟を持つ」という表現に読み替えていただいても構いません。

どのような表現を使おうとも、お伝えしたい真意は、現状のままでもなく、変わった後の状態でもない、なんとも定まらない状態に居続けることなしには、「変わった」という状態に到達することは望めないということです。

0でも1でもない、モヤモヤした状態に置かれることを私たちはとかく嫌います。しかし、そのようなモヤモヤ状態があると認識した上で、「私はそのような状態に身を置き、そこを経て変わるのだ」と決意することが、「変わる」ための第一歩なのではないでしょうか。


●「免疫マップ」や「適応を要する課題に関するコラム」のバックナンバー

適応を要する課題への対応をどうすべきか? 序章:寄稿の意図 (小島美佳)

組織における免疫マップの活用 第1回:私たちが直面している問題の本質と「免疫マップ」

組織における免疫マップの活用 第2回:ツールとしての「免疫マップ」とその使い方

組織における免疫マップの活用 第3回:「免疫マップ」の活用法と注意点

組織における免疫マップの活用 第4回:なぜ免疫マップを使えないのか?

組織における免疫マップの活用 第5回:ステークホルダーマネジメントを活用する

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