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2014年08月25日 小島美佳 [バランスト・グロース パートナー]

【前編】マインドフルネスが問題解決力を高める

私が初めて「マインドフルネス」という言葉に触れたのは、今から10年ほど前でした。その当時はとてもユニークではあるけれど確立されていない、興味深い、同時にどこか怪しさも感じる領域に思えました。しかし、最近になって「マインドフルネス」という言葉はリーダーシップの分野で随分と聞くようになり、ブームのようなものを巻き起こしているように思えます。その理由は、多くのハリウッド俳優たちや企業家、有名アーチストが瞑想を活用するようになったこと。そして何よりもシリコンバレーを代表するFacebookやGoogleといった企業がこれを取り入れ始めたからだと思います。

コーチングやリーダーシップの分野で活動する皆さんにとっては、既にご存知の流行キーワードであろうマインドフルネス。しかし、この瞑想という技術とマインドフルネスの概念が、一体ビジネスにどう効果的なのか? について明確に言える人は少ないのではないかと思うのです。本稿では、この瞑想というテクニックが どのように日々のビジネスシーンに影響を与えうるのか、その材料の一つをご提供するのが目的です。なお、マインドフルネスの定義などについては、バランストグロースが提供する別コラムを参照ください


●瞑想がビジネスに効果的と証明することは可能か?

先日、シドニーにてSIYLI が行うGoogleのマインドフルネストレーニングの一部(3日間)を体験してきました。そこには300名ほどの参加者:マインドフルネス研修の導入を検討する企業の人事部、自らの興味のために参加するビジネスマン、心理学者、リーダーシップトレーニング講師、企業から受講を義務付けられた若手管理職など、様々な分野の人々が集まっていました。マインドフルネスという言葉を聞くのも初めてという方もいたように思います。

その中でとりわけ参加者の興味が向いたのは、瞑想の効果に関する研究。どこまで瞑想というプラクティスがビジネスに効果的なのか...。という疑問に答えてくれる学術的な説明でした。特に、マインドフルネストレーニングの導入を検討する企業、今後これを売っていきたい研修会社や個人にとっては欲しい情報だったのでしょう。しかし、その時の講師 Mark Coleman氏は、

『現在、多くの研究機関がこの分野の実験を始めていますから、細切れに情報を得ることはできます。が、学術的に認められる内容が出てくるまでには、あと10年ほど待つ必要があるでしょう。なお、マインドフルネスの効果に関する研究で現在 最も盛んなのは医療と学校教育の分野です。特にアメリカにおいては国の予算がそちらへ動いている。ダイレクトにビジネスへ与える効果について研究結果は、今のところ存在しません』

と仰いました。私も、現在 ある大学の研究に瞑想経験者として被験者の協力をしていますが、その研究内容はかなり専門的で、日々のビジネス成果につながるものになるのか?というと、無理があるような気がします。マインドフルネスに着手することで自分のパフォーマンスにどうメリットがあるのか。あるいは自分の組織にどれだけ良い影響が出てくるのかを知りたくても、学術的な分野で決定的な情報を得ることは、現時点では難しいと考えます。


●EQ(Emotional Intelligence Quotient:感情知性)とマインドフルネス

では、私たちは瞑想という技術、そしてマインドフルネスという頭の状態を保つことに、どのようなメリットを感じているのでしょう。一体、何のために?そして、本当にそれは効果的なのでしょうか...?その疑問に対する一つの答えがEQです。実際に、Google研修の土台となっている書籍 "Search Inside Yourself (邦題:サーチ! 富と幸福を高める自己探索メソッド)" の内容、またGoogleで行われている研修もEQの議論が前提となっています。

知能(IQ)が高いだけでは良いリーダーにはなれない。自分やチームの感情の側面にも意識を向け、自己の感情を最善に制御できるリーダーが部下のモチベーションを高める。中長期的な成果を生みだすリーダーとなるためには、EQの開発が必要だ、という考え方。
実際、アメリカの軍隊でもEQの高いリーダーほど部下からの尊敬を集め、部下が命令に従いたいとする意識が強くなるという調査結果が出ているそうです。コーチングの技術を学ぶことの重要性が注目され始め、導入企業が増えた背景には、EQ的な要素に対する課題認識が背景にあるのでしょう。以下はダニエルゴールドマン氏が定義するEQのフレームワーク(Google研修で実際に利用されているもの)です。内容はSIYLI のホームページで全て手に入ります。

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(1)自己に対する客観的な認識ができる:Self-awareness、(2)自分の言動や感情を制御できる:Self Regulation、(3)自分や周囲のやる気を高めることができる:Motivation、(4)共感力がある:Empathy、(5)他者に影響を与えることができる: Social Skills (Google では Leading with Compassion と言っています)がそれぞれの要素となります。
しかし、このうち最初の(1) 自分自身についての理解が得られない状態では、その他の(2)~(5)の要素が全て不完全になってしまいます。自己理解ができない人間が、自分の感情の制御をしようとしたところで... また他人のやる気を高める行動をとったところで痛々しい空回りになってしまう。

結局のところ、「失敗するリーダーたちの多くは自分自身や自分の活動を客観的に見ることができていません」。また、「自分が持つ恐怖や失敗経験と向き合うことができないと、危機に直面した時に精神的な不安定をもたらします」 (Bill George 元経営者、ハーバード大学教授)。強みや弱み、心の癖、責任から逃れようとしがちな、あるいは攻撃的になりがちな場面、現在 自分が克服すべき課題などを真摯に内省する力、Self-awarenessがEQ開発の基礎となります。当然のことながら、これは容易なことではありません。ストレスがかかればかかるほど困難です。それを助けるのが瞑想のテクニックであり、ありのままの自己、ありのままの心の中を評価判断することなく観察できる状態(マインドフルネス)が役立つのである。それが、ビジネスにマインドフルネスが必要であるという主張の根拠となります。

このような議論の流は一見筋が通っていますし、ある程度の納得感を得ることは可能でしょう。しかし、様々なリーダーシップ論に精通する人事担当者は、EQの概念については2000年ごろからご存じであったでしょうし、そこにマインドフルネスの概念が加わっても、「それは新しい!取り入れてみよう」とは思わないのではないでしょうか。何か惹きつけられるほどの斬新さに欠ける... そんな風に感じる可能性もあるように思います。

実は、私自身もどこかEQの領域だけでマインドフルネスを語ることに違和感を覚え、「マインドフルネスとは?」という原点に戻って改めて考える機会を得ました。マインドフルネスとは、「ありのままの自己、ありのままの相手、ありのままの状況、ありのままの組織を一切の偏見や感情、評価なく だた見守るステート(State: 状態)」。ゆえ、私たちは全ての行動を、この「マインドフル」なステートで行うことができる...。そんな風に考えると、より広がりはあるような気がするのです。

後編では、マインドフルネスと問題解決思考について論じます。



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バランストグロースがご提供するマインドフルネス関連コラムは、こちらからご覧になれます。

【ジェレミー・ハンター】

第1回:ストレスにさらされるリーダーとマインドフルネス

第2回:マインドフルネスの意義

第3回:「マインドフルネス」トレーニングの内容と「マインドフルネス」トレーニングが求められるストレス状況

第4回:より効果的なリーダーシップのための「マインドフルネス」 -前半

第5回:より効果的なリーダーシップのための「マインドフルネス」 -後半

【野田浩平】
ビジネスにおける瞑想の効用


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