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2013年05月30日 佐甲 真吾[バランスト・グロース パートナー

第5回(最終回):「マインドフルリーダー」を育てる
 -適応に関する課題に立ち向かうスキルを養成する-

※本稿は、MOBIUS EXECUTIVE LEADERSHIPのニュースレターの記事を、
著者であるジェレミー・ハンター氏の許諾の下、抄訳・再構成したものです。


ジェレミー・ハンター氏略歴(個人ブログへのリンク)

  • クレアモント大学院大学 P.Fドラッカー経営大学院(ドラッカー・スクール)准教授
  • 「Self Management」理論研究の第一人者
  • "人生の豊かさ(Wellbeing)"と"仕事における真の創造性とパフォーマンスの引き出し方"について研究。
    ミハイ・チクセンミハイ(世界的に著名な認知心理学者で「フロー」理論の提唱者)とともに、クレアモント大学院内にQuality Of Life Research Centerを設立。
  • 1999年より、ドラッカー・スクールのMBA 及びExecutive MBAプログラムにて"Self Management"及び"Executive Mind"の2講義を担当。同校の年間最優秀教官賞を両講座にて受賞。
  • コンサルティング実績は、スターバックス、グーグル、米トヨタ自動車、ロサンゼルス警察など、企業、公的機関含め多数。
  • ハーバード大学大学院(ケネディー・スクール)にて修士号、シカゴ大学大学院にて博士号を取得。

第5回:より効果的なリーダーシップのための「マインドフルネス」 -前半

前回は、マインドフルネストレーニングの影響に関して、感情的反応、注意の仕方と記憶、知覚と認知の視点から検討を行った。最終回の今回は、共感、意思決定と革新に関して、マインドフルネストレーニングの影響を考えて行きたい。

>第4回へのリンク

INDEX--------------------------------------------------------

●反射的な感情を押さえる(第4回)

●自身の視野に囚われずに現実を知覚する(第4回)

●共感を育む

●創造的に行動する

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●共感を育む


マインドフルトレーニングが、現在起こっていることに注意を向ける能力を拡大することを通して、一瞬で状況をより幅広く認識する力を開発することに役立つことに加えて、Farbら(2007)の研究によれば、リーダーシップ開発の文脈においてマインドフルネストレーニングには重要な潜在的効果がある。それは共感する力を増やすという効果である。



マインドフルネストレーニングによって、自分自身が考えている時に考えていることを知り、自分が心に感じている時に心に感じていることを知り、自分が感覚している時に感覚していることを知ることを、参加者は容易にできるようになる。さらに、瞬間における状況の知覚の範囲を広め、共感の能力を作り出す。


リーダーシップは社会的な活動であるため、リーダーと特に近いフォロワーとの関係性の質が重要である。それは他者の物の見方を理解することが、効果のあるチームを作り、正しく働くグループを結集することに繋がるからである。(Hogan & Hogan, 2002)


マインドフルネスが人と人との間の関係の質を改善するという証拠を示す研究は増え始めている。男女の仲に焦点を当てているものの、Carsonらは、マインドフルネストレーニングが男女双方の幸福感を改善し、自分自身とお互いの日々のストレスをより効果的に扱う能力を改善したことを発見した。(Carson, 2004)


マインドフルネスと関係性についての研究によれば、よりマインドフルネスが高ければ高いほど、関係性に関する満足感が大きくなる。さらに、マインドフルネスは、葛藤を伴う話の後に起こりがちなパートナーに対する否定的な感情を削減し、肯定的な評価を促す。


より高い水準のマインドフルネスをもった人は、不安や怒り・敵意を経験することが少なく、衝突に直面した際により前向きな結果を生みだす。マインドフルネスは苦痛の基準を下げないように予防する役割を果たし、パートナーとのより前向きで建設的な関わりをもたらす。(Barnes 2007)


上に紹介した研究は男女の仲の領域のものであるが、彼らの発見が、リーダーとそのチーム間の関係にも適用できると推測できる。特に、Barnesら(2007)によって発見された、マインドフルネストレーニングを受けた被験者が衝突の際に示す不安や怒り・敵意が低いという事実は、リーダーとフォロワーの関係に関して、マインドフルトレーニングが大いに役立つ可能性を暗示している。


●創造的に行動する

最後に、マインドフルネスと創造性との間の直接の相互関係を示す研究はまだ実施されていないようだが、Friedman と Forster(2001によれば、そのような相互関係が高い確率でありそうだ。彼らが実施した創造性に関する研究について議論する前に、簡単にDavidson と Kabat-Zinnら(2003)によって行われた研究を紹介する必要がある。


彼らはバイオテクノロジー企業の協力のもと、マインドフルネストレーニングが前頭葉前部の活性化に与える影響を探る研究を行った。彼らは左右の前頭葉皮質(LPFCとRPFC)の脳の電子的活性状態を、8週間のマインドフルネス瞑想のトレーニングプログラム実施前、直後そして4カ月後の時点で計測した。


25人の被験者が瞑想グループでテストされ、比較グループは瞑想グループと同じ時点でテストされた。8週間終了時、双方のグループの被験者は免疫反応を計測するためにインフルエンザワクチンを接種された。


Davidson(1998)は右前頭葉皮質の活性化と免疫反応の減少の関係に注意を払ってきた。2003年の研究によって、瞑想トレーニングを受けていない人に比べ瞑想トレーニングを受けた人に左前頭葉皮質の明確な活性化があることが明らかになった。さらに、比較グループに比べて瞑想トレーニングを受けた被験者にインフルエンザワクチンに対する抗体価の明確な増加が見られた。左脳の活性化の増加の大きさとワクチンによって起こされる免疫反応の大きさは関連がありそうだ。これらの結果は4カ月後の計測でも同様であった。


重要なことは、マインドフルネストレーニングを受けた被験者の左右の前頭葉皮質活性化の比率に変化があることが確認されたことである。


Gray(1970,1994)は二つの重要な行動に関わる身体のシステムを発見した。彼はこれを行動阻害システム(Behaviour Inhibition Systems : BIS)、?恐怖、嫌悪、不安、反感などが現れるときに示される「避けようとする」心の状態?と、行動活性化システム(Behaviour Activation Systems : BAS)‐情熱、誇り、関心、好奇心のような感情が現れるときに示される「近寄ろうとする」システムと呼んだ。


Davidson(1998)が明らかにしたように、これらの二つのシステムは前頭葉皮質の活性化に非対称性が見られることと関係がある。左前頭葉皮質の活性化はBAS(近寄ろうとする心の状態)と対応し、右前頭葉皮質の活性化はBIS(避けようとする心の状態)と対応する。


ここでFriedmanとForster(2001)の研究に戻ろう。彼らは2つの大学生グループにマウスが紙で書かれた迷路を抜けることを助けるタスクを課した。2つのグループが受け取った紙には一つ違いがあった。


「近寄る」方の絵は、ネズミの穴の前に迷路の外に置いてあるチーズのかけらが書いてある。「避ける」方の絵は同じ迷路なのだが、迷路の上を飛ぶフクロウがいつでもネズミを捕まえる状態にあるところが違っていた。


迷路を抜けるには2分ほど必要である。どちらの絵であっても、参加したすべての学生は時間内で解決した。しかしパズルに取り掛かった後の影響の違いは印象的だった。直後に創造性に関するテストを行ったが、ネズミがフクロウから逃げることを助けたグループはチーズを見つけることを助けたグループよりも得点が50%低かったのである。


マインドフルネストレーニングコースの後で「近寄る」心の状態がもたらす潜在能力が拡大することはDavidson と Kabat-Zinn(2003)によって実証されている。そして、Barnhoferら(2007)は、マインドフルネスのトレーニングを受けたリーダーは創造性と革新の増加を経験しやすいということを明らかにした。


これらの結果に基づいて論理的に推定できることは、すべて他の条件が同じ場合、マインドフルネストレーニングを受けたリーダーは、トレーニングを受けていないリーダーよりも、経験に頼って反応することが少なく、状況認識のレベルが高く、客観性の水準が高いということである。


今回で連載は終了となります。


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