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2013年04月16日 佐甲 真吾[バランスト・グロース パートナー

第3回:「マインドフルリーダー」を育てる
ー適応に関する課題に立ち向かうスキルを養成するー

※本稿は、MOBIUS EXECUTIVE LEADERSHIPのニュースレターの記事を、
著者であるジェレミー・ハンター氏の許諾の下、抄訳・再構成したものです。


ジェレミー・ハンター氏略歴(個人ブログへのリンク)

  • クレアモント大学院大学 P.Fドラッカー経営大学院(ドラッカー・スクール)准教授
  • 「Self Management」理論研究の第一人者
  • "人生の豊かさ(Wellbeing)"と"仕事における真の創造性とパフォーマンスの引き出し方"について研究。
    ミハイ・チクセンミハイ(世界的に著名な認知心理学者で「フロー」理論の提唱者)とともに、クレアモント大学院内にQuality Of Life Research Centerを設立。
  • 1999年より、ドラッカー・スクールのMBA 及びExecutive MBAプログラムにて"Self Management"及び"Executive Mind"の2講義を担当。同校の年間最優秀教官賞を両講座にて受賞。
  • コンサルティング実績は、スターバックス、グーグル、米トヨタ自動車、ロサンゼルス警察など、企業、公的機関含め多数。
  • ハーバード大学大学院(ケネディー・スクール)にて修士号、シカゴ大学大学院にて博士号を取得。

第3回:「マインドフルネス」トレーニングの内容と「マインドフルネス」トレーニングが求められるストレス状況

前回(第2回)は、「マインドフルネス」とは何かについて考えた。今回はマインドフルネストレーニングの内容と、リーダー達が直面しているストレス状況について考える。

>第2回へのリンク

INDEX--------------------------------------------------------

●「マインドフルネス」トレーニングの内容

●リーダーであることに伴うストレス

●「良い」ストレスと「悪い」ストレス

●ストレスの与える影響

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●「マインドフルネス」トレーニングの内容


「マインドフルネス」コースの参加者はメタ認知のスキルを間接的に、しかし非常に効果的に学ぶ(Teasdaleら2002)。


「マインドフルネス」トレーニングの参加者はまず、呼吸に注意を向けて瞑想するように指示される。彼らの注意を呼吸の感覚を落ち着かせることに注意を向けさせる。 瞑想の最中に、インストラクターは心がさまよう時に、その心の行き際に注意を向け、そしてやさしく丁寧にまた呼吸に注意を戻すことを指示する。


インストラクターは、「もし心が100回それるようなら、100回戻ってきなさい」と付け加えることもある。心がさまよい、私たちはその心がどこに行ったかを知り、再びもどってくる。


何回も何回も、繰り返し練習を行うことによって、参加者は四つのキーとなるメタ認知スキルを学ぶ。


1.自分の心が自分の望むところにないということを見るスキル 「私は座って瞑想している。呼吸に従っている。しかし私は、私のto-do listの次は何かということについて考え続けている」


2.自分が望まないところから自分の心を切り離すスキル 「実際には、私は今to-do リストのことを考えている必要はない。私は(考えないことを)選ぶことができる...」


3.自分が持って行きたいところに自分の心を持って行くスキル 「私は呼吸に戻ってくる」


4.自分の置いておきたいところに心を置き続けるスキル 参加者は数分間、気が逸らされることなく、呼吸に従う。


●リーダーであることに伴うストレス

マインドフルネストレーニングに関する実践の場でのアプローチはKabat-Zinn(1990)と彼の同僚によって臨床の現場で開拓された。そのアプローチはもともとストレスや慢性的な痛みの問題に対処するために作られたものだった。


マインドフルネストレーニングに関する経験的な証拠を体系的に調査した結果(Baer et al., 2003; Grossmann et al., 2004; Chiesa & Serretti, 2010)によれば、マインドフルネストレーニングは過度のストレスによる生活の質を低下させないための有効な手段となる。


リーダーの立場にある者は、自分の地位に付随する試練を楽しみ、自分の仕事が刺激的であると感じることが多い(Lundberg & Frankenhaeuser,1999)が、リーダーであることは非常にストレスがかかる。Boyatzis と McKee (2005)はリーダーの地位にあるものが特に影響を受けやすい「パワーストレス」の状態を述べている。このパワーストレスは、彼らが経験する多方面にわたるプレッシャー、大組織にある権限とコミュニケーションの曖昧さ、そしてリーダーの地位にいることからくる孤独さの副産物として生まれる。


Boyatzis と McKeeは、ある程度のパワーストレスはリーダーの地位にある者にとって避けられないものであると見ており、成功するリーダーへの鍵は、ストレスを避けることではなく、ストレスの与える影響から回復する取り組みを普段から行うことにあると述べている。マインドフルネスの訓練は、ストレスから実際に回復することができるようになるための重要なカギなのである。


●「良い」ストレスと「悪い」ストレス

Harvard Business Reviewのインタビューで、Herbert Benson (Fryer, 2005)は、Selye's(1975) が定義したeustress(ギリシア語で'eu'は良いを意味する)とdistress?-苦痛―の区別について語っている。繰り返しストレスにさらされて解決されない状態でいると、「苦痛」となり、さらにその苦痛は不安や抑うつをもたらす。


しかしストレスは、トレーニングや目標の高い仕事を通して、肉体的、精神的機能をより高めることもある。ストレスそれ自体は良きにつけ悪しきにつけ、あらゆる変化に対する心理的な反応であり、頭や体がそれに適応して「戦うか逃げるか」の反応を選ぶ。これが「良いストレス」(eustress)として経験されると、明確な思考、視野、創造的な洞察をもたらす一方で、「苦痛」(distress)になると、リーダーの仕事の大部分がもたらす否定的なストレス要因を呼び起こす、とBensonは主張している。


Bensonは、自分が運営している医療施設において、変化する世界経済、金融市場や資金源の手に負えない出来事の影響、世界の石油共有、家族の問題、税金、交通渋滞、ハリケーン、児童誘拐、テロや環境破壊について絶えず心配しているエグゼクティブとよく会うと話している。これらの殆どは適応に関する課題であり、これまで見てきたように、苦痛(distress)をもたらし得る。しかしながら、マインドフルリーダーにとって、それらは同様に「良いストレス」(eustress)の源となるかもしれない。


「良いストレス」(eustress)と「苦痛」(distress)の関係は、心理学者のRobert Yerkesと John Dodson によって1908年に提示され、ストレスとパフォーマンスの関係を説明するスタンダードとしてよく取り上げられているYerkes-Dodsonカーブに特徴的に示されている。組織や個人に係るプレッシャーが増加すると、彼らの能力?プレッシャーに反応する許容範囲?も増加する。しかしある点を超え、プレッシャーが弱まらない状態が続くと、パフォーマンスは下がる。個人に関しては、そのプレッシャーがあまりにも長く続くと、ストレスを感じるようになり、最後には病的な状態になる。


このことは日常の実践の場と同様、リーダーシップの研究開発の現場にもあてはまる。これまで卓越したリーダーと呼ばれている人達は、変化に対応するために、マインドフルネスに類する能力を利用してきたかもしれないし、マインドフルネスに似た考えは、長い間著名なリーダーシップ研究家によって議論されてきた(Drucker, 2006; Heifetz, 1996)。彼らが開始した議論はさらに洗練され、基幹をなす理論に育ってきた。そして私たちは、これらの考えを入念に仕上げ、経験的に実証したいと考えている。


●ストレスの与える影響


重要なことは、組織とリーダーは、リーダーとしての地位と共に現れるそのような慢性のストレスが、甲状腺・内分泌疾患、肥満、糖尿病、普通に楽しいイベントから喜びを見いだせないこと、免疫低下、乾癬、紅斑症、線維筋痛症、慢性疲労、慢性の痛み、がん、心臓病、不妊症、過敏性腸症候群や他の消化器疾患といった、広い範囲の病気に関連することを認識することである (Britton, 2005)。過剰なストレスにさらされたままだと死に至ることもある。


リーダーシップの視点から、Boyatzis とMcKee (2005)は、慢性のストレスは「不協和」の状態を招き得ると主張している。Boyatzis とMcKee (2005)によれば、不協和音を招くリーダーは、チームや組織の熱意を下げる。モラルを押し下げ、周りにいる人達を不幸な気分にさせる。そのようなリーダーが経験するストレス要因は、彼らを過剰な管理、嫌悪、不寛容、過敏性と恐怖に導く。その状態は適応に関する課題解決を主導する資質を打ち消してしまう。したがって、慢性的なストレスは、リーダーシップの大変重要な課題なのである。


この後議論するように、マインドフルネスは、私たちがストレスのかかる経験を意識して処理することと、その処理の仕方を変えるために役に立つ。自分が経験するストレス要因をよりうまく管理でき、かつより効果的にそれらのストレスから回復することのできるリーダーは、メンバーと不協和音が生じる状態に落ちにくく、結果としてより良いリーダーになりうる。自分自身のストレス要因を管理する方法をよりうまく身につけているマインドフルリーダーにとって、適応に関する課題は、Bensonが示唆しているように(Fryer 2005)、「苦痛」(distress)ではなく、「良いストレス」(eustress)をもたらす。


Chiesa と Serretti (2009)によって行われた、健康な人のストレスマネジメントのための「マインドフルネスに基づくストレス削減」(MBSR:Mindfulness-Based Stress Reduction)の効果に関する分析結果によれば、MBSRは明らかにストレスを減らすことができる。ではどのように減らすことができるのだろうか。


●次回の内容

この後、マインドフルネスがリーダーにとってどのように役立つのかということに関して、マインドフルネスのメカニズムについてさらに深い探索を行う。その際に私たちは、ストレス・反射的な感情を抑え、よりよい決断・行動を想像的に行い、習慣的な行動では対処できない状況に対してこれまでにない対応をするためにマインドフルネスが果たす役割について考察する。言い換えれば、(マインドフルネスを獲得することによって)どのように私たちが適用に関する課題に対処できるリーダーになるのかということを考察する。

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