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2013年03月21日 佐甲 真吾[バランスト・グロース パートナー

第2回:「マインドフルリーダー」を育てる
ー適応に関する課題に立ち向かうスキルを養成するー

※本稿は、MOBIUS EXECUTIVE LEADERSHIPのニュースレターの記事を、
著者であるジェレミー・ハンター氏の許諾の下、抄訳・再構成したものです。


ジェレミー・ハンター氏略歴(個人ブログへのリンク)

  • クレアモント大学院大学 P.Fドラッカー経営大学院(ドラッカー・スクール)准教授
  • 「Self Management」理論研究の第一人者
  • "人生の豊かさ(Wellbeing)"と"仕事における真の創造性とパフォーマンスの引き出し方"について研究。
    ミハイ・チクセンミハイ(世界的に著名な認知心理学者で「フロー」理論の提唱者)とともに、クレアモント大学院内にQuality Of Life Research Centerを設立。
  • 1999年より、ドラッカー・スクールのMBA 及びExecutive MBAプログラムにて"Self Management"及び"Executive Mind"の2講義を担当。同校の年間最優秀教官賞を両講座にて受賞。
  • コンサルティング実績は、スターバックス、グーグル、米トヨタ自動車、ロサンゼルス警察など、企業、公的機関含め多数。
  • ハーバード大学大学院(ケネディー・スクール)にて修士号、シカゴ大学大学院にて博士号を取得。

第2回:マインドフルネスの意義

前回(第1回)は、本論のイントロダクションとして、適応に関する課題に対して私たちが直面している状況と、その状況において「マインドフルネス」が求められることについて述べた。今回は、「マインドフルネス」とは何かについて考えて行きたい。

>第1回へのリンク

INDEX--------------------------------------------------------

●「マインドフルネス」とはどのようなものか

●「マインドフルネス」トレーニングの効果

●「マインドフルネス」の特徴

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●「マインドフルネス」とはどのようなものか

「マインドフルネスは、あなた自身やあなたを取り巻く人々、そしてあなたを取り囲む世界に注意を向けるための方法であり、マインドフルネスによって、より創造的かつ前向きに行動し存在するための方法を取り入れることができるようになる。
(Chaskalson,2011)

マインドフルネスをもって物事に注意を向けることは、「現時点」に深く根ざした考えを持つことであり、常日頃私たちが持ってしまいがちな先入観の影響を受けないことである。
(Kabat-Zinn,1990)


物事に注意を向けることは、自分自身の主観的な経験を呼び起こすことである(James,1890)。従って、マインドフルネスをもって物事に注意を向けることを洗練させることは、自分自身の内的・外的世界との関係の持ち方を劇的に変える力を持っている。


マインドフルネスの力は、私たちの「物事に注意を向ける力」を体系的に開発することによって生み出される。私たちは、自分自身がこれまで意識せずに自動的にたどってきた思考・感覚・行動・結果のパターンを認識できるようになる。この認識を持つことによって、そのパターンの道筋を変えることもできるようになる。


結果として、マインドフルネスは、「状況が変化する中で、適切に素早く対応できる心の適応力としなやかさをもたらす(Nyanaponika 1965, p. 80)。」さらに、物事に注意を向けることは、私たちが活動する上で必要不可欠な要素であるので、マインドフルネスは、私たちの生活のあらゆる領域に影響を与えうる。


マインドフルネスは、私たち人間の苦しみの問題を解決する手段として、2500年以上前に仏陀が教えていたことである。同じようなマインドフルネスのアプローチは今日、心を変容させる具体的な方法論として、医学(Kabat-Zinn, 1990)、臨床心理学(Segal, Williams, & Teasdale, 2002)、法律(Riskin 2002)、軍事(Jha & Stanley, 2010)、企業(Chaskalson, 2011)、マネジメント?スクール(Hunter & Scherer, 2009)、さらにはプロバスケットボール(Lazenby, 2001)といった多様な幅広い世俗的な文脈の中で実践されている。


※訳注「マインドフルネス(mindfulness)」は、パーリ語の「サティ」を英訳した言葉。 英語では「注意する」「気をつける」という意味で、漢語では「念」、日本語では「気づき」と訳されることが多い。「サティ」は仏教の瞑想に関する概念のひとつで、「対象に価値判断を加えることなく、中立的な立場で注意を払う」ことを意味する。


●「マインドフルネス」トレーニングの効果

重要なことは、マインドフルネスの能力は訓練で伸ばすことが可能で、効果の高い訓練方法は、マインドフルネス瞑想の技術に関する訓練であるということである。


マインドフルネストレーニングの効果について論証している科学論文の数は増えている。その領域はストレス及び慢性疼痛、鬱、摂食障害、犯罪嗜好、薬物乱用(Chiesa & Serretti, 2010)など多岐に渡っている。Google Scholarの検索では、「マインドフルネス」という言葉が論文に入っているものが、症状の緩和に焦点をあてて行われたものであるにしても、2011年12月14日に実施した時点で2480件あった。


一方で、健全な人に対するマインドフルネスの効果に関する検証結果が増え始めている。そこでは、様々な尺度から、望ましい結果を生み、全体的な幸福を強化することが示されている。(Brown & Ryan, 2003; Chiesa & Serreti, 2009)


現在までに、リーダーシップに対するマインドフルネスの適用に関する調査結果は殆どない。 (Bryant & Wildi, 2008) しかし、リーダーシップ以外の領域におけるマインドフルネスの適用状況や、一般的な人間の生活におけるマインドフルネスの効果として知られていることを踏まえると、リーダーシップの文脈においてマインドフルネスを適用することは十分有益であると推測できる。


マインドフルネストレーニングは、私たちが物事に対してどのように注意を向けるかということに焦点をあてている点については、その他多くのリーダーシップ研究における実践の手法と異なった考え方を持つものではない。私たちが自分の心をよりよく理解し、変容させる - そして、そのような内的な変化が、私たちの世界観と、行動、そしてもたらす結果を変える - 際に役立つ、体系的な方法である。


マインドフルネストレーニングが他のリーダーシップトレーニングと異なる考え方を持っている点は、物事に注意を向ける能力を訓練によって向上させることが可能であり、しかもその向上した能力を日々の行動の中に組み込むことが可能だとしていることだ。


マインドフルネストレーニングの効果は明確な生物学的変化によっても裏付けされている。一例を挙げると、Hölzelと共同研究者が行った神経画像の研究(2011)によれば、8週間のマインドフルネストレーニングコースによって、参加者の物事への注意の向け方、学習と記憶プロセス、感情の制御、自己言及のプロセス、視野の設定に関わる脳領域に変化が現れている。


●「マインドフルネス」の特徴

マインドフルネスは、私たちが経験したことを知覚・処理し、現実として認識する一連のモデルを作り出す方法を明らかにするツールであり、このモデルをより、意識の変化に応じて柔軟に変化しやすくさせるツールである。意識に対してより注意を傾けることは、人が生まれながらに持っている、経験に基づいた習慣に従うことよりも、状況が変化した際に正確な状況理解をもたらしやすい。


マインドフルネスの実践が持つ他の手法にはない特質は、それがごく近い経験に根ざしたツールであるということである。リーダーシップ研修は、これまで、過去の行動に遡った分析や、未来視点でのビジョン創造・目標設定に焦点を当てる傾向があった(Drucker, 2001)。リーダーシップ開発は、今現在の自分自身を理解することに殆ど焦点を当ててこなかったのである。


すべての人間活動が起きているのは今現在である。「今ここ」が、人生の経験の仕方を見る「生中継の」視点である。私たちは、現在に焦点を合わせることによって、先入観を取り去り、実際に起こっていることを確認する能力を持てるようになる。「今ここ」に焦点を当てることによって、行動や意図が現実にそぐわないことを認識する能力を持てるようになる。現在に焦点を当てることによって、重要な人間関係を壊してしまう前に、自分自身に反射的な感情が湧きあがっていることを知る能力を持てるようになる。


マインドフルネスは、物の見方が偏る、反射的に反応する、本能的な生存反応を起こす、協調的かつ合理的な行動を阻害する、個人の健康だけでなく、グループ及び個々の回復力を低下させる - これらのことは相互に関連している - といった、私たちの能力を低下させるような状況に対応することができる。


このことは日常の実践の場と同様、リーダーシップの研究開発の現場にもあてはまる。これまで卓越したリーダーと呼ばれている人達は、変化に対応するために、マインドフルネスに類する能力を利用してきたかもしれないし、マインドフルネスに似た考えは、長い間著名なリーダーシップ研究家によって議論されてきた(Drucker, 2006; Heifetz, 1996)。彼らが開始した議論はさらに洗練され、基幹をなす理論に育ってきた。そして私たちは、これらの考えを入念に仕上げ、経験的に実証したいと考えている。


●次回の内容

この後、マインドフルネスの効果とその可能性について考える。次回は、まず、マインドフルネストレーニングの内容を例示した上で、マインドフルネスの必要性が生じる基本的な状況に関する一般的な議論を簡単に行う。すなわち、物の見方が偏る状態であり、自動的かつ無意識の人間の知覚・思考・感覚・行動がとられる状況について検討を行う。

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