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2013年03月04日 野田浩平 株式会社ココロラボ

ビジネスにおける瞑想の効用

※古くから私たちの生活に浸透してきた瞑想が、今、あまり縁のなさそうなビジネスの領域で注目されています。
本稿は、人工知能の観点から人の感情と意識の関係を明らかにするモデリング/シミュレー ション研究の第一人者である野田浩平氏から、バランスト・グロースで実施するセミナーに関連して、寄稿頂きました。


ビジネス界で注目されつつある EQ(感情知能)と瞑想

日本経済は右肩上がりの高度経済成長を達成しきり、裕福で平衡状態に陥った状態を 20 年間享受してきました。高度経済成長の時代は模倣すべきアメリカという経済大国の製品(電化製品、自動車等)を追いつけ追い越せで激走し、追い抜いて次の一手を打とうとしている間にバブルが崩壊、経済停滞に陥ったわけです。


その中で時代の気分はやや悲観的なムードに終始し、IT や金融などの産業がイノベーションを繰り広げるアメリカや、BRICs、next 11 などの新興国のムードとは違う空気が国内に蔓延しています。


MBA ブームは去り、MBA 人材を欲する大企業は彼らを有効活用できず、大企業自身も以前のように 10 年先まで安泰といえない中、別の能力開発分野が注目されつつあります。それは、自分自身、そして他者の感情をコントロールし自己認識とリーダーシップを開発する EQ(感情知能)の分野から見出されてきました。


IT 業界のグーグルが瞑想(マインドフルネス)を中心とした研修プログラムを開発し、昨年出版された書籍で話題となりました。(Tan, 2012)そして、グーグルでは EQ のプログラムをダニエル・ゴールマンのアドバイスのもと、2007 年から実施しています。


イノベーションを起こし続けるためのEQプログラムを、"Search inside Yourself"と命名し、自己を知り、統制すること。また他者に共感し、動機付け動かす EQ プログラムの中核に瞑想を位置付けました。


また EQ と瞑想は、とても共通点が多いコンセプトです。例えば、宗教界ではチベット仏教のダライラマ 16 世と EQ のダニエル・ゴールマンは 10 年以上前から対話を行っています。


グーグルは何故瞑想を中核にしたプログラムを作ったのでしょう?それは、SAT(米国大学適性審査試験)で満点を取るようなエリート人材で構成されるような企業でも、当然のことがらビジネスが伸び続けるわけでもなく、それ以上、あるいは以外の要素も必要であると気付いたからです。そして、それを打破するための施策を模索していたからと言えるでしょう。


瞑想とは古くから宗教活動を中心に 私たちの日常生活に浸透していました。日本では仏壇に手を合わせ、神棚に礼をする...そのような行動様式、習慣がお馴染みです。しかし、今になって、そしてこういった世界とは無縁と思われるビジネスの領域で、なぜ注目されるのでしょう?


脳科学という知見から瞑想を考える

脳科学や生理学の知見では、「瞑想」はうつ病に効果的とされ、生活習慣病の予防にもなり、更には労働生産性を高めることが知られています。瞑想にも異なる手法が存在します。


まず、分かりやすくご説明すると頭から思考を追い出して無を追求していく瞑想法と、念仏など一つのことを唱えて脳を集中させる瞑想法の二つに分類されます。次に興奮系の瞑想法と抑制系の瞑想法に分けられます。体を動かして祈祷するようなものと、座禅を組んで落ち着く方法と考えてもらうとよいでしょう。


ここでは興奮系の瞑想法ではなく、グーグルのプログラムでも取り入れられているベーシックな抑制系の瞑想がもたらす効果とメカニズムについて述べていきたいと思います。


抑 制系の瞑想法では呼吸を落ち着け、深呼吸をする方法が一般的です。この呼吸では、ご存じのように交感神経と副交感神経という自律神経系のうち、副交感神経が優位になります。交感神経は戦う自律神経で、太古の昔から人間が備えていた機能です。


敵に襲われるなどの非常事態の際、場を乗り切るために心拍数を上げ、覚醒し、アドレナリンを放出し、「火事場の馬鹿力」を可能とします。副交感神経は休息を取り、次なる活動に備えるためにリラックスするための機能です。


現代のビジネスマンは多忙な日々の中、ストレス・興奮状態のまま夜を迎えて眠りにつけず、眠ることができても疲れが取れないといった経験をされている方が多い。また、職場でも顧客や職場のトラブル、緊急対応などストレスが蓄積する場面も多いことでしょう。


人体は、特定のプレッシャーの中ではコルチゾールというストレスホルモンが放出され、危機が去るまでストレス状態が続いてしまいます。これは交感神経が優位の状態です。人体に危機が迫った状態、怪我をした際に血小板を増やして傷を早くふさごうという機能も発動してしまい、傷もないのに血が固まりやすくなり、血栓の元となって脳梗塞、脳内出血などにつながる可能性すらあるのです。


当然のことながら、このような状態では業務を続けても生産性は上がりません。しかし、実は 10分程度の睡眠をとることで疲れが一時的に解放され生産性を上げることが可能なのです。職場でなかなか睡眠をとりづらいという場合には、軽く目をつぶった瞑想を行うだけでも効果があります。瞑想を行うと、交感神経が優位だった状態から副交感神経が優位な状態を作ることが可能となります。


思考に大きく影響する神経伝達物質

瞑想と呼吸については多くが語られていますが、そのメカニズムについて触れておきましょう。まず、深くゆっくりした呼吸を行うことで身体内の二酸化炭素濃度がやや高くなります。二酸化炭素濃度が高くなると、脳内でセレトニンという物質の量が高くなるという効果が知られています。セレトニンとは複数ある脳内の神経伝達物質のひとつです。神経伝達物質は人の感情を修飾します。セレトニンはそれが枯渇するとうつ状態になってしまいますが、量が増えると、ゆったりとした幸せな気分が訪れます。


なお、先ほど触れたアドレナリンが多く放出されると怒りの感情が発動され、「動」のエネルギーとなりその場の突破を助けます。他にも不安状態を引き起こすノルアドレナリンや幸せな気分を引き起こすドーパミンなどがあります。


アドレナリンやノルアドレナリンが多く交感神経が高ぶった状態では、思考は目前の問題に集中できますが、大局に立った分析や意思決定は出来なくなります。


逆にセレトニンが多く出ている状態では落ち着いた、そして何かに強く影響はされないフラットな思考が可能となります。このような精神状態は冷静で、かつ、幅広い視点に立ったビジネスを行っていくうえでは必要な精神状態です。


ちなみにドーパミン過多の状態は、何か物事を達成した後や嬉しいことがあった後のお祭り気分な状態です。ブレストなどで発想が必要なときや、やる気を出してとにかく何か物事を先に進めなければならないときには有効ですが、クリティカルな視点で分析をするというような作業の際には向かない気分です。


これらの神経伝達物質はゆっくりと脳内を巡り、私たちの思考活動に強い影響を与えています。つまり、これら神経伝達物質の多い、少ないによって感情が左右され、ひいては思考の内容までをも変化させてしまうのです。


では落ち着いて幸せな気分を作り出す、副交感神経が優位な状態を作り出すにはどのようにすればよいのでしょうか?その解の一つが瞑想なのです。


瞑想によって得られるビジネス効果

さて、グーグルでは単に心と体をリラックスさせ、リフレッシュして業務に戻れるよう瞑想研修を導入していた訳ではありません。瞑想を行うと得られるメリットがその他にも存在するからです。ここでは、瞑想によって交感神経を優位に立たせる以外のメリットについて述べていきたいと思います。


ビジネスにおいて、瞑想がもたらすもう一つの効果は、自分自身から距離を置いて客観的な視点から洞察が得られる点です。神経伝達物質の話を思い出してみましょう。アドレナリンやノルアドレナリンが放出されている状態で判断や意思決定を思考すると、思考が集中し、思考範囲が狭まります。これは、記憶から探索してくる知識の内容が限定され、時には通り一遍の解決策しか出てこない可能性があります。


ところが、セレトニンが豊富な瞑想状態で解決策を思考すると、適度にテーマから距離を置いた状態で脳内が検索され、うっかり忘れていた知識や記憶、思いもよらぬ解決策などが得られることがあります。加えてドーパミン優位の状態で同じテーマを思考すると、まさにブレインストーミングに適した状態であるような、自分やトピックと関係がなさそうな記憶や知識まで含めて顕在化することがあります。


このように、瞑想状態で定期的に方向性を模索、解決策を探ることは非常に有効なのです。宗教的儀式や非日常の世界に瞑想というエクササイズを留めておくことは、ビジネスの可能性を広げてくれる思考の扉に鍵をかけているのと似たようなものです。私たちがこれまでに慣れ親しんだ戦略的思考、論理的思考だけでは解が得られなかった領域に、私は瞑想が何かヒントを与えてくれることを期待しています。


瞑想法は我流で良い

ご参考までに私の瞑想法について触れておきましょう。


大きく分けて 2 種類あります。朝の瞑想と日中の瞑想です。朝は近所のお寺までジョギングを行い、その境内本殿で気の済むまで何分でも瞑想します。とはいえ短くて 3 分ぐらいでしょう。朝のお参りに来ている人から比べれば長いですが、何十分も読経したり座禅したりという長さではありません。これは瞑想が習慣となり、すぐに瞑想状態に入ることができるようになったためです。


ジョギングについては、本稿では振れませんでしたがリズミック運動という周期的、定期的な運動でセレトニンを増加させる効果がある運動なため、お寺に着くまでの間に既にリラックスした状態になっています。もちろん、朝陽によるメラトニン、そして、実は数十分のランニング状態で現れるランナーズハイ(ベータエンドルフィンの放出)という状態を追加することも出来ます。


日中の瞑想には、ヨガの音楽(数十分)を聞いています。疲れて集中できないときなど音楽と声の誘導に任せて聞き、体も動かせたら動かします。終わるとスッキリしているという状況です。


瞑想に入るにはさまざまな流派でさまざまな方法がありますが、ご自身が継続的に続けられ、まさに日常生活の一部にすることが可能な方法を模索することが良いでしょう。

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